天使こども園ニュース

こどもの眼 5月号 園長 早川 成

  • 2019.05.27
  • 園長

「こどもの眼」 ~じゃがいもに学ぶ~ 
園長 早川 成

新年度がスタートして早1ケ月。まだまだ聞こえてくる朝一番の元気な泣き声に「さぁ今日も張り切って行こう!」とスイッチを入れる毎日です。門では新しい門番さんが登場し、ダンゴムシ探しも熱を帯びて来て、随分と賑やかになってきています。
 先日、体育教室で集まっている年中さんを眺めていると、男の子が私のところにやってきました。
手嶋先生の話が始まりそうな時に私を見つけて離れてきてしまったので、やる気を刺激しようとひと芝居打ちました。
「今から体育教室?」「うん」「もう年少さんじゃないけん、運動あそびじゃないんやね?」「うん、そう」
「あれ?年中さんになって何か変わった気がする。ちょっと触らせて」(と言いながら腕や足を触り)
「お~っすごく強くなっとる!さすが年中さん。これなら体育教室もばっちりやね」と持ち上げました。すると、その子が自慢げに一言。
「だって、オレ幼児牛乳飲んどるもん!」
ニヤリと笑ってそう言うと、皆のいるところに走っていきました。狙ったオチとは違ったものの、結果オーライです。
 
また、別の日のこと。到着したバスから降りてくる子たちに挨拶をしていると、女の子が言いました。
「私、バスに乗るの今日で5回目!」 
「おはよう」より先に、顔を見るなり飛び出したこの言葉。いったい何が言いたかったのでしょう?どんな思いがあるのでしょうか?
全くわかりませんが、クスッと笑ってしまう、何だか素敵な挨拶でした。
実は、この二つのエピソードの子はどちらも年中組さん。年少と年長に挟まれたこの学年は例えると3人きょうだいの真ん中。
下と比べて「もうお姉ちゃんなんだから」と言われ、上と比べられて「もっとお兄ちゃんにならないと」と言われてしまいます。
甘えたいときに我慢させられたり、自慢したいのにできて当たり前と言われたり、なかなか複雑なお年頃です。
幼児牛乳を飲んで強くなろうとしている男の子、バスに乗る度に回数を数えている女の子、他にも日々いろいろなことを感じ、言いたいことが山ほどある子が沢山いることでしょう。
こども達は、こどもの感覚で自分自身の成長を捉えています。大人の物差しで、どうこう言ってはいけないと肝に銘じています。
心して受け止め、励まし、喜び合って過ごしていきたいと思います。

さて、今回のテーマは「じゃがいもに学ぶ」です。
今年は農園の〝じゃがいも〟が例年になく好調で、年長組がすでに2回ほど水やりに行きましたが、その成長をとても楽しみにしています。
それとは逆に、随分前のことですが、不作で全く収穫できなかった年がありました。
理由ははっきりしていて、畑の耕し方が悪く、植える時期もズレてしまい、じゃがいもが育つ環境を十分に作ることができなかったということです。なかなか芽がでないので心配になり、じゃがいもの状態を見たくなりました。土を掘ってみると、腐っているたね芋が見つかりました。
また、土が十分に乾いてない時に耕して畑を作ったので、土の塊がゴロゴロしていて芽が出るのを邪魔しているようでした。
何より反省したのは、芽が出ているかどうかが気になって掘り返しているときに、せっかく出ている芽がとれてしまい、ダメにしてしまったことです。この出来事によって、私は幼児教育は「土づくりである」と感じたのでした。

まず、じゃがいもにはたね芋そのものに育つ力があります。
その力が上手く芽生えるかどうかは、植える際に、土の質や畑の状態、日当たりや水はけ等の育つ環境をきちんと整えておくかどうかにかかっています。そして、時期を逃さずに植えるということも重要です。
土づくりを疎かにし、劣悪な畑に時期外れに植えたのに、芽が出ないと心配をしても遅いのでした。
すべきときにすべきことをせず、後になって焦ってジタバタした結果、出ている芽さえ摘んでしまったのです。
せっかく出ている芽でさえも「さぁこれからだ!」という時に、ゴツゴツの畑で邪魔するものがあると、成長を妨げてしまうのです。
幼児教育を「根っ子づくり」に例えることがありますね。大樹にはしっかりとした根っ子が張っている。
良い実を結ぶには、まず強い根っ子を育てておくことが必要ということだと思いますが、私の実感としては、「まずは〝土づくり〟から」です。

この時期はじっくりと土を耕しておきたい。
根っ子が栄養をたっぷり吸収できるように、伸びた芽が思う存分成長することができるように、環境を整えることが大事。
そして、そこにいろいろな種を蒔いておきたいと思います。どの種が、いつ、どんな芽を出すのかはそれぞれでしょう。
この先、違った環境に置かれて戸惑うことがあるかもしれません。
でも、その時になって慌てなくていいように、自信を持って見守ることができるように、〝良い土〟で育てたいと思います。
「園長先生、きのうね、大きな〝おみくじ〟がいたよ!」
素敵な種に今日も出会いました。育つ力満載の種が園庭のあちらこちらで遊んでいます。
体育教室も、幼児牛乳も、バスも、抱っこも、涙でさえも、それぞれの種が育つための栄養ですね。
種の力に負けないよう、良い畑、良い農夫?を目指して頑張ります。

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