こどもの眼 4月号 園長 早川 成
「こどもの眼」
~こどもファースト~
園長 早川 成
『あるところに、いつも〝おなら〟ばっかりするおとうさんがいました。おとうさんのおならはとってもくさいので、おうちのひとはたいへんです。それに、おとうさんのおならはふつうのおならとちがって、「コラーッ!!」というおならだったので、みんなビックリしていました。こまったこどもたちは、おならがでないように、おしりにぼうをつっこんで、ふたをしました。そしたら、あるひどろぼうがおうちにやってきました。どろぼうがわるいことをしていると、ねていたおとうさんはおならがしたくなって、とうとうぼうがぬけておならがでてしまいました。「コラーッ!、コラーッ!、コラーッ!!」おおきなおおきなおならだったので、どうぼうはふっとんでにげていきました。』
三学期のある朝、年中さんの女の子が門に遊びに来て「こわい話して~」と言いました。私が「先生は怖い話より楽しい話がいいなぁ。いつも先生ばっかりだから、今日は誰か、面白い話してくれないかな?」と頼んだら、その子がこんな話をしてくれたのです。
私は、すっかり感心してしまいました。面白い話が〝おなら〟の話で始まるところまでは想像がつきますが、おならが「コラーッ」と怒るという発想に驚かされます。そして、おならが出ないように工夫したけれど、こらえきれずに栓が抜けてしまうという展開のあとに、結果として泥棒を退治してしまうという結末には、「お見事!」と拍手を送りたくなります。日本昔話の「屁ひり女房」を御存知でしょうか?(是非読んでみて下さい。ちなみに私は大好きなお話です。)その子がその昔話を知っていたかどうかはわかりませんが、それに負けない完成度の高さに「おなら父ちゃん」とでも名前を付けて絵本にしたいぐらいです。
さて、いよいよ2019年度が始まりました。お話が大好きな「おなら父ちゃん」の作者も年長さんになります。この先いったいどんな成長を見せてくれるんだろうと考えると、今からワクワクしてしまいます。
本年度、当園は70周年を迎えますが、その大きな節目に私たちは目標として「自由保育への挑戦」を掲げました。幼児教育は「遊びと環境」による教育であり、何かができるようになること自体を目的としていないということは、これまで折に触れお伝えしてきました。そのことを踏まえた上で、天使流は教師が「教える」のではなく、何かを「させる」のでもなく、たくさんの〝遊び〟と〝経験〟によって、子ども自身が「学ぶ」ことを目指しています。「教育」ではなく「響育」を!を合言葉に、「のびのび保育」の実践を重ねてきましたが、更に2019年度は、自由保育を目指し、より「子どもの主体性」を大切にした保育に取り組んでいきたいと思っています。
ここで改めてお伝えしておかなければならないのは、「自由保育」は〝勝手気まま〟ではないということ。また、こどもが「主体的」であることと、保育者が〝放任〟するということは違うということです。今回私達は、「自由保育」とは「子どもから始まる保育」であるという捉え方をしました。新年度の準備をしながら、どのような保育をするか、どのような行事を計画するかを考えましたが、その活動の全てを「子どもが今、どんなことに興味を持ち、どう感じ、何が育とうとしているのか」を知ることから始めることにしました。子ども達の主体性を育むために、保育者にも一人ひとりが主体的であることが求められます。こどもの姿から始めるためには、こどもにしっかりと向き合い、一人ひとりを理解することが大切です。そのことを確認し合いました。言葉にすると何やら難しいことを言っているようですが、70周年を迎える「天使こども園」がこれから何を目指していくのかを具体的にお伝えしていきます。私達が何を大切にしているのかが少しずつ目に見えてくると思います。
絵本や空想が好きな子とは、いっぱいお話をしたいと思います。体を動かすのが好きな子には、思いっきり発散できる活動をたくさん用意したいと思います。観察したり、調べたり、物を作ったりするのに興味がある子には、じっくりと物事に取り組む環境を工夫したいと思います。
「難しいことを やさしく、やさしいことを 深く、深いことを 愉快に、愉快なことを まじめに」
作家の井上ひさし氏(故人)の言葉で、私の座右の銘のひとつです。こどもの近くにいる者として、常にこどもの側に立ちたいと願う者として大事にしている言葉です。一年間、様々な出来事を「こどもの眼」で見ることができるように努め、常にこどもと一緒に学びたいと思っています。たくさんお話をしましょう。よろしくお付き合いください。
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