天使こども園ニュース

こどもの眼 3月号 園長 早川 成

  • 2019.03.07
  • 園長

「こどもの眼」
~ 園長スペシャル ~ 
園長 早川 成

今年もこの時期を迎えました。年長さんは、2月に入ったとたんに何をするにも「最後の~」が枕詞になり、カウントダウンが始まっていました。そんな中、年長さんとのお楽しみの時間「園長スペシャル」が最終回を迎えました。
6年程前、年長組の担任教師に頼んで、園長が年長さんに直接関わる時間を月1回作ってもらいました。ネーミングの案としては延長保育ならぬ「園長保育」というのもありましたが、子ども達が楽しみにできる特別な時間になるように…と、「園長スペシャル」という名前を付けてスタートしました。
続けるうちに定番となった内容もありますが、毎年こども達の姿や学年のカラーが違いますので、そこは工夫が必要です。できるだけ子ども達の興味どころを捉え、タイムリーな内容になるよう、教師に情報をもらいながら、試行錯誤しています。
さて、今回その最終回にどんな内容がふさわしいかを担任と話し合いました。今年の年長組は、6月の「99大作戦」(探求と研究で99です)がヒットし、とにかくいろいろなことに興味を示し、よく気付き、しっかり考え、わからないことを調べたり、どうすればいいかをよく話し合ったりするようになりました。一言でいうと「よく遊び、よく学ぶ」ようになったのです。様々な活動をとおして、楽しく仲良く遊ぶ力がついたという手応えを感じています。そこで、最終回は、小学校に行っても、もっと遊べるように、もっと楽しめるようにと、〝遊び〟をテーマにすることにしました。
「今日の園長スペシャルは〝遊びの巻〟です。小学生になると勉強が始まるけど、遊ぶことも大事ということを忘れないで欲しい。最後は、園長先生が小さい頃にやっていた遊びをみんなに教えます。」と前置きをしたあとで、単純で手軽にできる遊びを紹介しました。ハンカチの玉子、口笛、歯笛、手笛、紙飛行機、ゴム鉄砲、そして「どびん・ちゃびん・はげちゃびん」等々です。「なにそれ?」と思われる方は、どうぞ年長さんにお尋ねください。その遊びが生まれた経緯やエピソードまで詳しく説明してくれる子がきっといると思います。次の日の朝、ゴム鉄砲を手に登園してきた子がいました。お家に帰って早速作ったそうです。他にも挑戦した子が何人もいたようで、突然「割りばしと輪ゴムがいる!」と言われて訳が分からなかったとお母さん方が笑っていらっしゃいました。子ども達の真剣な表情と戸惑うお母さん方の顔を思い浮かべ、思わずニヤリとしてしまいました。他の遊びも同様です。紙飛行機も、すぐに自分で作って職員室に見せに来てくれましたし、「どびん・ちゃびん・はげちゃびん」も、あっという間に大流行!あちらこちらから、「どびん、ちゃびん、はげちゃびーん!」と言う声が大きな笑い声と共に聞こえてくるのでした。
「遊び」をど真ん中に据えた保育実践に取り組んでいる園として、こんなに嬉しいことはありません。遊べる子ども達に育っていることを誇らしく思います。以前も書いたことがありますが、遊ぶことができる姿の根っ子には〝遊び心〟が育っていると、私は思います。その遊び心は「面白いと思ったら、すぐに自分でやってみたい!」という気持ちから生まれます。俗にいう「スイッチが入る」というやつです。
幼児教育は「遊びによる教育」であると言われますが、どうして遊びがそんなに大事なのでしょう?先日、TV番組で有名アスリートの体験談を紹介していましたが、陸上の桐生選手と山縣選手の話にそのヒントを得た気がしました。
MCが自分の息子の足が遅いので、どうしたら走るのが速くなるかを尋ねました。その質問に対して山縣選手が「外でいっぱい遊ぶことですね!」と笑って答えました。MCは「え~っ?もっとちゃんと教えてくださいよ」と、今度は桐生選手に質問するのですが、またもや「外でいっぱいあそぶことじゃないですかね?」という答えが返ってきたのです。ありがちな質問に、日本陸上界のエースがボケて笑いをとったというオチだったのでしょうが、私はこの二人の答えがとても嬉しくて「そうそう!」と一人でうなずいたのでした。
この単純な答えには、「外で」と「いっぱい」という二つのキーワードがあります。外(=屋外)には身体を動かす環境があり、様々な刺激(しかも予想外であることが多い)にさらされる可能性がたくさんあります。運動感覚と五感をフルに働かせる経験ができるということです。そして、「いっぱい遊ぶ」と言うのがとても大事ですね。ここでいう〝いっぱい〟というのは時間の長さ(量)だけでなく遊びの質のことでもあり、つまりは〝満足度〟のことだと思います。ようするに二人が言いたいのは、「遊びが充実していて、いろいろな経験ができて、満足のいくまで思いっきり遊ぶことが大事」ということだと理解したいのです。さらに、言葉として言ってはいませんが、「友だちと」という言葉がきっと含まれていると思います。「外で、友だちと、満足いくまで遊んで育った。その結果、走るのが速くなったんじゃないかな?」と二人が言っているように思いました。
走るのが速くなったり、力がついたり、身体が強くなるだけでなく、遊びの中には、満足感や達成感、試行錯誤と創意工夫、集中力、認知力、思考力、持続性、協調性、社会性…と、子ども達の生きる力を育むのに必要な栄養素がたくさん詰まっています。その遊びを充実させる「環境」を用意するのが私たち保育者の役割であり、それをいかにして創り出すかが保育の醍醐味であると感じています。幼児教育が「遊びによる教育」であると共に「環境による教育」とも言われているとおりです。
一年を振り返り、園長としてどれだけの環境を子ども達に与えることができたかと自問自答しています。「園長スペシャル」に限らず、私の〝意図的な仕掛け〟の一つひとつが、子ども達の育ちの栄養となり、保育の一助となるよう、これからも努力していきたいと思います。
一年間、当園の保育をご理解いただき、お付き合いいただきましたことを本当に嬉しく思います。改めまして、心から感謝申し上げます。

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