天使こども園ニュース

こどもの眼 2月号 園長 早川 成

  • 2026.02.17
  • 園長

「こどもの眼」
~ 伝えたいこと ~ 
園長 早川 成

ある朝、バスから降りてきた年長さんと年中さんが、門を入ったところで立ち止まり、顔を突き合わせて向かい合っています。
バスの中で何があったのでしょう。
私は「ん?ケンカかな?」と思いましたが、とりあえず余計な口出しをせずに見守ることにしました。
年長の子が時々何かを言っていますが、年中さんは何も言わず黙りこくっていて、二人は対峙したまま動きません。
そのうちに、もう一人年長さんがやってきて「どうしたと?」と聞いていますが、見ているだけでは、いったい何が起きたのかも、どうなっているのかもさっぱりわかりません。
その後、随分と長い間が経ったので、声をかけてみることにしました。
「どうしたの?」と理由を聞くと、「バスの中で、○○くんが急にしゃべらんくなった…。」と年長さんが教えてくれました。
…とそこへ年中の子の担任教師がやってきたので、私はことの経緯を伝え、「落ち着いたら何があったのか聞いてみといて。」と頼んでおきました。
その日の夕方、担任にその子と話ができたかを尋ねると、「バスの中で、急にお母さんのことを思い出して寂しくなったそうです。」と言うのです。
私はてっきり二人がケンカをして、年長の子が謝っても許してもらえないので、お互いに気持ちが収まらないんだろうと、勝手に想像していましたので、予想もしない結果に驚きました。
仲直りをしようと懸命に謝っていたのではなく、急にしゃべらなくなった理由がわからずに、「どうしたの?何があったの?」と心配していたんです。
ケンカだったとしても、それはそれで子どもらしくていい光景だなと思っていましたが、理由を知って二人の姿を思い出すと、全く違って見えてくるから不思議です。二人の素敵な関係に、心が温かくなりました。
お母さん達と話をしていると、「園であったことを家で話してくれるんですが、何のことだかさっぱり分からなくって…。」とのお尋ねが時々あります。
私が分かる範囲でお伝えすると、「なるほど、そういうことか!そういえばなんかそんなこと言ってました。」と思い当たることがあるようで笑い話になるのですが、上手に伝わるように説明できるようになるまでの、この〝わかりにくい話〟を大切にして欲しいと思います。
言葉が使えるようになり語彙数が増えると、きっと私達は「わかるように、ちゃんと言ってごらん!」と要求します。
同じように、読み書きができるようになると、「よく読みなさい」「もっと上手に書きましょう!」と指摘するようになってしまいがちです。
ですから、今のうちに、またそうならないために、何を言っているのか分からないけれど伝えたい気持ちがあふれている子ども達の楽しさや、本人にしか分からない暗号のような文字で手紙を書いてくれる面白さを、思う存分に味わっておきたいのです。
子ども達が、一旦言葉や文字を獲得してしまうと、そんな大らかで、温かくて、嬉しい時間はもう戻ってはきません。
子ども達には、伝えたくても伝えられないことがたくさんありますが、その分、お友達や教師、保護者同士で伝え合いましょう。
それが幼児期なのです。

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