天使こども園ニュース

こどもの眼 12月号 園長 早川 成

  • 2025.12.01
  • 園長

「こどもの眼」~ におい の 思い出 ~ 園長 早川 成

灯油ストーブの匂いに、冬の訪れを感じています。
子どもの頃、もちろんエアコンもファンヒーターもない時代、窓もサッシではなく隙間風が入るので、冬の朝は家の中がしんしんと冷えていました。
布団から出るとまず台所に行き、ストーブに手をかざしながら体を温めていたのを思い出します。
火を入れたばかりのストーブの匂いと、台所に漂う朝食の匂いが、冬の朝の我が家の雰囲気と一緒に記憶として刻まれています。
他にも、例えば通学路のキンモクセイの香りや習字の時間の墨の匂い、飼っていた犬の匂い(臭い?)等、特に小学校の頃の思い出が色々なニオイと一緒に記憶されていて、50年も経っている今でもその〝におい〟をかぐと、その時々の情景や出来事が蘇ってくるのです。
黒柳徹子さんの著書「窓際のトットちゃん」に、子どもの頃に飼い犬のロッキーの耳の匂いを嗅ぐのが好きだったというエピソードが紹介されていますが、愛犬のにおいが徹子さんの子どもの頃の思い出と強くつながっていることが伝わってきます。
我が家では、長女が猫を吸いに時々やってきます。
猫好きの人はお分かりになるでしょうが、「猫吸い」と言って、猫を抱きしめて顔を埋め、においを吸い込むと癒されるとのこと。
うちの猫たちはあまりニオイがしないと思うのですが、〝実家の匂い〟がするそうです(笑)
さて、そんなことを考えていると、私の目の前にいる子どもたちは、どんなにおいを嗅ぎ、どんな思い出を刻んでいるんだろう?ということが気になってきました。
脱臭消臭の時代、そしてすれ違う人からは香水の香り、あちこちに芳香剤の匂いが漂います。
また、驚くことに今どきのこども達は持ち主が分からない衣服やタオルを柔軟剤の匂いで誰のものか嗅ぎ分けることができます。
その昔、キャンプの時に温泉の脱衣場で、脱いだパンツと着替えのパンツがわからなくなったと言う子が続出し、においを嗅いで見分けていたのとは大違いなのです(笑)
大きく変わった〝におい〟の文化は、こどもの育ちに少なからず影響を及ぼすでしょう。
そのにおいと共に、どんな情景が子ども達の心に残るでしょう?
それが感性の育ちにどう関わるのかを見極めることが大切だと思います。
ある寒い日の朝、門にやって来た女の子たちがしがみついてきたので、久しぶりに「あったかやさん」を開店しました。
両腕をジャンパーの下に滑り込ませて温めていると、一人の子が「園長先生の匂いがする!」と言いました。
するともう一人が「群先生の方がいい匂いだね!」と言いました。
そしたら最初の子が「私のお母さんはオムライスの匂い!いい匂いでしょ!」と言うのです。
抱きついて甘えている情景が目に浮かぶようで、とっても幸せな気持ちになりました。
このにおいと思い出が大きくなってもずっと残っているといいなと思いました。

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