こどもの眼 6月号 園長 早川 成
「こどもの眼」
~ 〝意味がない〟ということの意味 ~
園長 早川 成
GWが明け、個別面談も終わり、通常保育が始まって早くも3週間が経ちました。
〝あの手この手〟を駆使して子ども達と遊んでいるうちに、少しずつ手応えが出てきているところです。
ある朝、年長さんの女の子が、お家で作ったのでしょうか?何かを手にして登園してきました。
近づいて見ると手作りの本のようでしたので、声を掛けました。
「あれっ、それ本じゃない?」「自分で作ったと?」「ページも書いてあるやん?すごいね!」
女の子はチラッと私を見ましたが、無言のままお母さんと外階段を上がって行きました。
しばらくして下りて来られたお母さんがニヤニヤしながら(すみません、私にはそう見えました。)近寄って来られ、ポツリと言われました。「園長先生と話したくなかったそうです。」
それだけ聞くとかなり衝撃的ですが、お母さんが言うには、「園長先生が話しかけてたよ。何でお話せんと?」って聞いたら、「だって、話したくないもん」って言うんですよ、ということでした。
そこまで聞いて、やっとお母さんのいたずらっぽい薄ら笑い(すみません、私にはそう見えました。)の理由がわかったのでした。
先月号でご紹介したようにあの手この手でコミュニケーションのきっかけをつくろうとしていますが、それは相手があってのことです。
興味を読み間違えたり、タイミングを外したりすると、今回のように空振りしてしまうこともあります。
積極的な攻めが裏目に出て、「毎朝いろいろ話しかけて来られるのも、なんかねぇ…」と、避けられてしまわないように気を付けないといけませんね(苦笑)
大振りしてホームランを狙うのではなく、できれば3割ぐらいは打てるように、研究と練習をコツコツと積み重ねていきたいと思いました。
ところで、皆さんは「じらこ」って何だかご存じですか?
もしかしたら「ジラコ」かもしれないし「JIRACO」かもしれないのですが、私には何のことだかさっぱりわからないので、知っていたら教えて欲しいのです。
ある日のこと、年中組の男の子が突然私に向かって「じらこ!」と言いました。
「なに?どういう意味?」って聞くのですが、近寄ってきて「じらこ!」と言います。
次の日も遠くから指をさして「じらこ!」と叫ぶのです。
突然「じらこ」って言われたら、皆さんはどうしますか?
「いや、ないない」って声が聞こえてきそうですが、それはそうですよね。
ただ、子ども達と遊んでいると、こんな意味不明の出来事が時々あるのです。
…で今回、私はとりあえず「オレ様が〝ジラコ〟(なぜかカタカナの気分です)っていうことを何で知っている?」「絶対に誰にも言うんじゃないぞ!」と言ってみました。
すると、「〇〇先生(担任)に言うもん!」と言ってニヤリとしています。
その後しばらくして、もう忘れてしまったかな?と思っていると、これまた突然お母さんの前で「じらこ」と言ってくるのです。
私が「しっ!お母さんにバレるやろ!」とにらんで言うと、またニヤリと笑っています。
こうなると、すでに「じらこ」の意味はどうでもよくなり、その言葉自体がその子と私の遊び道具になっています。
つまり、〝意味のないこと〟に意味が生まれるのです。
今回、このエピソードを書こうと思いついたとたんに「じらこ遊び?」はいつの間にか消えてしまいました。
すると、その代わりに「園長マッキー!」と叫ぶ年長組の女の子が現れたのです。
「園長先生はマッキーじゃなーい!」「マッキーって言うな!!」と言って追いかけると、笑いながら逃げる
…という意味はないけど面白い遊びが始まっています。
COPYRIGHT © 2019 KURUME TENSHI KINDERGARDEN All Rights Reserved.