天使こども園ニュース

こどもの眼 2月号 園長 早川 成

  • 2025.02.06
  • 園長

「こどもの眼」~やる気 根気 のんき~ 園長 早川 成

一月の半ば頃、年長組さんが園外保育に行きました。
その少し前に、「園長先生、下牟田公園に行きたいんだけど、行っていいですか?」と、男の子が職員室に聞きに来ました。理由を聞くと、「ハンターごっこをしたいから。」とのこと。
小学生だった頃に、よく遊んでいたあの〝下牟田公園〟の懐かしい情景が一瞬で脳裏に浮かびました。
即答してもよかったのですが、「運動場が広くなったのでわざわざ出かけなくてもできるんじゃない?」と一応言ってみましたが、「下牟田公園でやりたい!」とのことでしたのでOKの返事をしました。
当日は、現地に到着すると企画した子たちが皆にルールを説明し、わかったかどうか定かでないまま(ちなみに私にはさっぱり理解できませんでしたが…)、「早くやろーよ」の一言で、何となくゲーム開始となりました。
ところが、いざ始まってみると、私のいらぬ心配をよそに、それはもう楽しそうに走り回り、誰一人として飽きる様子もなく、また疲れて止めてしまう子もいないのです。
終わった後は、時間いっぱい遊んだ満足感が伝わって来て、年長組の成長した姿に手応えを感じることができました。
〝成長した姿〟とは、ルールの理解、体力や身のこなし、ハンターになるか逃げるかの役割を選び、お互いに守ったり助けたりして協力し合う姿、みんな一緒に楽しんでいる様子です。とても楽しく、また頼もしく感じました。
今回この年長さんの「ハンターごっこ」を見ていて、改めて思ったのは、子ども自身が提案し、自分たちで考えて遊ぶことがいかに大切かということです。
自分たちで〝やりたい〟と思ってやる遊びは、こんなにも楽しむことができるということを、目の当たりにしました。
また、自分たちで考え、意見やアイディアを出し合って創り上げていく遊びで、子どもたちがこんなにも豊かに育つということを実感したのでした。
「保育」とは、保育者の考えや思いではなく、子ども達自身の〝やりたい〟を保育者が見取り、一人ひとりの気持ちを受け止め、準備した環境の中で、子どもが群れながら育っていくという営みであるということを、子ども達の姿から学ぶことができました。
ある新聞で『「やる気」はどこに』と言う記事を目にしました。
『やるべきことをしていない自分や他人に対して、「やる気がない」と感じることがある。「やる気を出せ」と言われても育たないやる気の芽。私たちの「やる気」はどこにあるのか。』という問いに、専門分野が異なる大学の先生がそれぞれに意見を述べていました。
ある方は、ご自分の子どもの頃の経験を基に「自分の中から湧いてくるやる気は一番強く、長続きもするけれど、逆に誰かから与えてもらったやる気はすぐに枯渇してしまう。」、学生を指導する立場になって思うのは、「そもそも誰かにやる気を与えるのは難しいということです。」と語っていました。
もうお一人は『やるべきことをやっていない時に「やる気」に原因を求めると問題は解決しません、私たちに「やる気」のスイッチは備わっていないのです。』とした上で、『心に原因を求めている限り、行き着くところは個人攻撃や自責です。「やる気がない」「根性がない」と責めるのは、ハラスメントにつながる可能性があります。』と指摘していました。そして、「本当に何かを解決したいなら、環境を変え、行動を変えるしかない。「やる気」という根性論から脱却することが必要です。」と結んでいました。
「やる気、根気、のんき」の中で、やる気は本人の中から芽生えるか、またはその環境を与えられることで生まれてくるか、どちらにしても人にどうこうされて育つものではないと言えそうですね。
誰かに諭されたり指導されたりすることで身に付くのは、かろうじて三つの中では根気ぐらいでしょうか?
〝のんき〟に至っては、持って生まれた特性と言うか、天性の持ち味というか、努力によって身に付くものではないように思います。
さて、「ハンターごっこ」に話を戻します。
何回戦かの後、ハンターに勝つにはどうすればいいかの作戦を立てるサークルタイムが始まりました。
…が、まずは輪が小さすぎて入れないとケンカが勃発し、話し合いが始まると、声が小さくて聞こえないとか、ちゃんと聞いていない方が悪いとか、意見がぶつかったりして、すんなりとはいきません。
私は先行きを楽しみにその様子を眺めていましたが、そんないざこざの最中に、なんと「ハンターに、〝本気出さないで〟って頼んだらいいんじゃない?」という名案?が飛び出しました。
私は、周囲の子がその提案に戸惑い、賛成はできないけど、かといってスルーもできないという微妙な表情と空気感がおかしくてたまらず、吹き出しそうになりながら見守っていましたが、結局は、「もういいかい?」と何度呼びかけても返事がないのでしびれを切らしたハンターが近づいて来て、みんな逃げてしまい作戦会議は終了となりました(笑) 
〝サークルタイム〟は、「やる気」の集まりです。
上手く話し合えるか、結論に至るかどうかが大切なのではなく、意見を出し合い、思いがそれぞれ違うことに気が付くこと、その上で話し合おうとすることに意義があります。
やりとりには一人ひとりの育ちがあり、とても味わい深いのです。子どもらしい姿が本当に素敵だと感じています。

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