天使こども園ニュース

こどもの眼 12月号 園長 早川 成

  • 2018.12.03
  • 園長

「こどもの眼」
~ 森の時間 ~ 

園長 早川 成

十月三十一日、もりぞうさんが高良山の森で年長さんと再会しました。以前のように斜面を駆け下りるのではなく、用心深くゆっくりとした足取りで森の中から現れたもりぞうさんに、子ども達は歓声を上げてお迎えです。
「久しぶりやね。遊びに来たと?」「うん、焚火に使う木を拾いに来た。」「へぇ、焚火するとね。そりゃあよかね。」「あのね、鍋をつくるんだよ!もりぞうさんも来てね」…とそこで、子ども達からもりぞうさんに手紙が渡されました。「あれ?ひらがなで書いてある。幼稚園なのにひらがな書けるったい、すごかねぇ。え~っと、どれどれ。もりぞうさん…へ?」「ちが~う!〝へ〟じゃなくて〝え〟」「何で?〝へ〟って書いてあるばい?」「〝へ〟って書いても〝え〟って読むの!知らんと?」と子どもたち。「もりぞうさんな、子どもん頃、いっちょん勉強せんやったけん、字ばよーと読みきらんとたい。で、焚火の鍋はいつするとね?」「十一月三十日!」「う~ん、こりゃ困った。森ん中にゃカレンダーのなかけん、何月とか何日とかわからんばい。」「じゃあ数えればいいやん」「それがたいね。10までしか数えきらんけん、30とか無理なんよ。」と、もりぞうさんが言ったところで一人の子が言いました。「じゃあさ、10を三回数えればいいやん!」「お~っ、そげんたい。10ば三回数えると、30になるったい。あんたぁ頭のよかねぇ!大したもんばい」ともりぞうさん。…ということで、勉強嫌いで文字・数が苦手なもりぞうさんと、急に賢くなった(ように見える?)子どもたちの愉快なやりとりは、一旦ここでおしまいとなったのでした。そのあとは、「一緒に遊ぼう!」と、子ども達が誘いに来ますが、もりぞうさんは「数の勉強ばしよるけん、あんたたちはどんどん動いて体ば鍛えんね。」と、どんぐりを拾って数え始めました。子ども達は森の斜面をよじ登っては駆け下りる遊びを何度も何度も繰り返しています。驚いたのは、登山遠足を経験した子ども達が、斜面をよじ登るときの手足の使い方が格段に上手になっていることです。身体の動きや筋力が身についているのはもちろんですが、何よりも山の中で遊ぶことに〝自信〟がついているのがよくわかります。遊ぶ勢いが全く違っているのです。子ども達が、飽きもせず上ったり下りたりを楽しんでいる様子を斜面の上で嬉しそうに眺めているもりぞうさん。そこに、子ども達が時々やってきては「数えられるようになった?」と声をかけています。何だかとてもいい光景です。おじいちゃんと子ども達の素敵な時間が森の中に広がっていました。
どれぐらい遊んだでしょうか?集合の声がかかり、鍋会で使う焚火の薪を拾う時間になりました。いよいよもりぞうさんの出番です。男の子と女の子と両手をつないで集合場所に向かうもりぞうさんに、女の子が言いました。「もりぞうさん、もっと勉強せんね。」すると、今度は反対の手をつないでいる男の子が「今日からさぁ、一回寝たらどんぐりを1個出して並べたらいいよ。」と、教えてくれました。体力をつけ、自信をつけ、勢いがついた子ども達は、いろいろなことに気付いたり、考えたり、人を思いやったりする力も身に付けています。「実りの秋とはこういうことなんだろうなぁ」と、もりぞうさんのつぶやきが聞こえて来そうです。ゆっくりと流れる〝森の時間〟は、街の時間に慣れすぎた私達にそんなことを教えてもくれるのです。そろそろ冬支度に入る季節ですが、森の秋はまだまだゆっくり深まりつつあります。ご家族で晩秋の森に出かけてみませんか?子ども達とゆっくりと森の時間を味わってみるのもいいと思いますよ。
さて、森の話が続きましたが、園でも子ども達の成長著しい姿があふれています。園長として、もりぞうさんに負けてはいられません。
「えんちょうせんせぇ~」「は~い。おはよう!」「えんちょうせんせー、ねぇねぇ、あのね~」「うん、なぁに?」「あのねー、えっとねぇ~」「うんうん」「うんとねー、あのねー…」。
いつまで続くのか?何が言いたいのか?そんなことはどうでもいいんです。話したいことがいっぱいあって、気持ちはあるけれども言葉がなかなか出てこない年少さん。この会話の楽しさは、ゆっくりとした時間の中でしか味わうことができません。
またある時は、「園長先生!」と呼ばれて振り向くと、そこにいるのは年少さんの男の子。近づいて「なに?」と聞くと、その子が一言。「もっとちゃんとしなさい!」
そばにいたお母さんと思わず顔を見合わせて、「お家でお父さんが言われているんじゃないですか?」と言って笑いました。これもまた、いい時間です。
11月の誕生会の日の朝のこと。「園長先生、ぼくね、クリスマスプレゼントもらうけん、誕生日プレゼントはないと。」「誕生日はいつ?」「1月。誕生日はプレゼントがなくてケーキだけ。」「ふ~ん、そうなんやね。」親子の会話が目に浮かんできそうです。実は我が家も長女の誕生日が12月で、誕生日とクリスマスとお正月が立て続けで出費がかさみ、悩んだことがあるのでした。そんなことを思い出して笑いながら聞いていると、その子が続けて言いました。「先生、あのね。きのうのきのう、ゆみこが外国に行った。」
これには思わず「???」でしたが、いいんです。子ども達は成長と共に、いろいろなことを言葉で伝えることができるようになります。見たこと聞いたこと経験したことを何でもお話ししたいのです。前後の脈絡はなくても、そんなこといちいち気にしてなんかいられません。だって、話したいことや思いつくことがたくさんあって、全部伝えたいのですから。私はこの時期に、この「コミュニケーション意欲」を大切に育てておきたいと思います。気持ちを抑え、言うことを聞くよう、おりこうさんに躾けられた子ども達の中には、この意欲が十分に育っていない子がたくさんいます。そんな中で、小学校では英語教育が始まりますね。甚だ疑問に思っています。
さて、同じく誕生会の朝、門で年少さんから手紙を受け取りました。
「いっしょに、にんにんしようね」という代筆に、
早川忍者と手裏剣の絵が添えてありました。実はこの日は私の誕生日でありまして、思いがけず、とても嬉しいプレゼントとなりました。
日に日に朝の冷え込みが厳しくなり、門では「あったか屋さん」が開店しました。まだお客さんは少ないのですが、ジャンバーの中に手や頭を突っ込んで暖をとる子が現れ、セーターが伸びる季節がやって来ました。「森の時間」ならぬ、「門の時間」もまた、心地よくゆっくりと流れています。

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