天使こども園ニュース

こどもの眼 7月号 園長 早川 成

  • 2024.07.02
  • 園長

~ 胸を張る瞬間(とき) ~ 
園長 早川 成

梅雨の季節、屋外での活動が多い当園にとっては悩ましい毎日ですが、雨の日には嬉しいこともあります。
一つは、農園の野菜や園庭の草木に水やりの心配がないこと。
もう一つは、登園して来る子ども達がなぜか晴れの日より元気になることです。
傘をさすのが楽しかったり、長靴をはくのが嬉しかったりするのでしょう。
いつもは抱っこやオンブでやってくる子も、両手で傘をしっかり持ち、笑顔で歩いてくることが多くなるのです。
ある朝のこと、男の子が傘にレインコートに長靴のフル装備でやってきました。
いつもと違う堂々とした足取りだったので、「あれ?いつもより強そうに見えるけど、何でかな?」と言うと、更に胸を張って歩きます。
よく見ると、レインコートが新しくなっているのがわかりました。
そこで、「わかった。恐竜のレインコートだから強そうに見えたのかな?」というと、隣にいたお母さんが、笑いながらうなずいていました。
しばらくすると、今度は女の子がやってきました。
帰り際にお母さんから「わちゃわちゃの森のトイレって園長先生が作ったんですか?どんなトイレなんですか?」と聞かれました。
どうして急にそんなことを聞くのかな?と思いながら説明すると、話を聞いたあとで理由を教えてくださいました。「娘が『園長先生はスゴい!トイレが作れるんだよ!』って言うんです。先日、宅配便が届いたんですが、大きい段ボールを見て『私もトイレを作る!』って張り切っているんです。」と、お家での出来事をお話して下さいました。そして、「園長先生、さすがですね。スゴいです!」と言って下さったのでした。
この話、褒められた私が「胸を張った」という自慢話ではもちろんありません。
お伝えしたいのは、子どもが自分でやってみたいと思うこと、やってみて満足することが大事だということです。 
子ども達は、森で焚火をするときに私が太めの木の枝をバキッと折って見せただけでも「わぁ!」と歓声を上げます。
収穫したキュウリを目の前で乱切りにして塩を振っただけでも「スゴイ!」と大喜びします。
運動遊びで跳び箱から飛び降り、前転をして忍者ポーズをとっただけでも「カッコいい!」と拍手喝采です。
大人にとっては簡単なことでも、実際は前転のあと立ち眩みしていたとしても(笑)、できるだけカッコをつけて大げさにやって見せる(魅せる)と、子ども達の目の光が強くなり、やる気のスイッチが入ります。
そして、やってみてできた瞬間、「見てた?」と自慢げに胸を張るのです。
先日、遊びに来た孫と近くの沢にカニを捕りに行きました。
兄と全く違い慎重派の弟は川の中を歩くのが怖く、靴が濡れるのがイヤで、へっぴり腰の泣きべそ寸前で、前途多難なスタートでした。でも、嫌にならないように、あきらめてしまわないように、励ましたり一緒にやってみたりしながら遊んでいると、少しずつ慣れてくるのが分かります。
ちょっとでも濡れることができたら褒め、先を行く私に追いついたら褒め、ゆっくり進んで行くと、顔つきが弱気からやる気の表情に変わり、前かがみで背を丸くしていた姿から、胸を張る立ち姿に変わっていくのでした。
とはいえ、付き合うじぃじは大我慢大会です。
「なんかそんぐらい!」「兄ちゃんはスイスイ登りよったとに…」「嫌なら帰るぞ!」
と口を衝いて出そうな(不適切な)言葉をグッと飲み込み、責めることなく、焦らせることなく、根気よく付き合わなければ、〝胸を張る瞬間〟を迎えることはできないようです。
大きくなって、鼻っ柱をへし折られるようなことがあっても、くじけずに立ち向かえるように、子どもの頃に胸を張る経験をたくさんしておいてほしいと思います。

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