こどもの眼 2月号 園長 早川 成
「こどもの眼」~ 満腹中枢の話 ~ 園長 早川 成
朝、お母さんと手をつないでスキップをしながらやってくる女の子がいます。
目が合うと恥ずかしがって止めてしまうので遠くからさりげなく眺めていますが、朝のスキップはいいですね!
見ているだけで楽しくなり、いつも元気をもらいます。
ところがある時、嬉しくなって私も一緒にスキップをしてみると、なんとスキップが上手くできなくなっていることに気が付きました。
膝にかかる体重に負担を感じるだけでなく、リズムが悪いのです。
気持ちだけはとっても軽やかなのですが、身体の動きが鈍く、もっさりとしていて、それはもうすでにスキップとは言えません。
もしクマがスキップをしたら、こんな感じになるんじゃないか…みたいな動きになってしまうのです。
3学期のある朝、気を取り直してスキップしてみましたが、やっぱり上手くいきません。
近くで見ていた男の子が、「先生は太ってるからスキップができないんだよ。」と親切にも?教えてくれました。
私が「そうかなぁ。じゃあお相撲さんはみんなスキップできないのかな?」と言うと、「そうだよ。お相撲さんはスキップできないんだよ。」とすました顔で当然のように言うのです。
私は「お相撲さんには失礼だけど、子どもって太っている人のことをこんなふうにみているんだなぁ」と妙に感心してしまったのでした。
そして、正月に届いたサッカー部の友人からの年賀状に、「歳をとって、ハーフタイムがやっとになりました。」と書いてあったのを思い出し、「アイツはまだサッカーやってるのに、こっちはスキップもできなくなってんだもんなぁ…。」と、新年早々にちょっと考えさせられたのでした。
随分前に、「園長先生はそんなに食べるから太るんだよ。」と言われたとき、「皆がそう言うけどね、本当は食べるから太るんじゃなくて、太ってるから食べなきゃいけないんだよ。」と返したことがありました。
詭弁のようですが、たくさん食べる→満腹中枢がやられる→食べても食べても満たされない→たくさん食べる…という理屈で言えば、まんざら間違ってもいないと思うのですが、いかがでしょうか?
さて、私の満腹中枢の話はさておき、子ども達と関わっていると、心にも同じように満腹中枢があるのではないかと感じます。
どれぐらい甘えたら安心するのか、どれぐらい動いたら落ち着くのか、どれぐらい遊んだら満足するのか…と考えると、心が満たされるレベルにはとても個人差があるなぁと思うのです。
ベストセラーの「窓際のトットちゃん」には、黒柳徹子さんが小学校を退学になり新しい学校に連れていかれた時、初めて会った校長先生がトットちゃんの話をずっと黙って聞いてくれたことがとても嬉しくて、この小学校に行きたいと思ったというエピソードが紹介されています。
おしゃべりのトットちゃんは、したい話を全部聞いてもらわないと満足しない子なので、そんな気持ちが満たされたから校長先生のことが大好きになり、トモエ学園の教育方針と教育内容が、好奇心旺盛で、気になることはやってみないと気が済まないトットちゃんの〝心の満腹中枢〟を満たしたのだと思います。
満足感や達成感は子ども達の自信や意欲を育みます。
それが子ども達の「生きる力」になるとすれば、一人ひとり違う心の満腹中枢に合わせて関わることが必要ですね。満腹感が足りない子には満足するまで与え、すぐに空腹になるエネルギーの消費が多い子には、常に充電しなければなりません。
残る3学期、子ども達の、甘えたい、動きたい、しゃべりたい、遊びたい…という心の満腹中枢を見極め、しっかり向き合いたいと思います。
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