天使こども園ニュース

こどもの眼 12月号 園長 早川 成

  • 2023.12.01
  • 園長

~ そばにいる人 ~ 
園長 早川 成

10月末、当園の園医をしてくださっていた小児科医の吉永陽一郎先生がご逝去されました。
大切な、そして大好きな方との早すぎるお別れに、悲しみと無念な気持ちがあふれました。

吉永先生とは、30年来のお付き合いで、当時、聖マリア病院に開設された、我が国で初めての育児なんでも相談外来「育児療養科」の長として子育て支援の最前線で働いておられました。
私は、こぐま学園で療育や相談支援に携わっていましたが、聖マリアの母子総合医療センター長である橋本武夫先生と、こぐま学園の大熊猛理事長と、それぞれにユニークで人間味あふれる師匠の下で働いていた私達は、お二人がけん引していた「筑後地区療育システム協議会」をきっかけに出会ったのでした。

医療・保健・福祉・教育の垣根を超えた地域のネットワークを創ろうと、私たちはすぐに意気投合し、「何か面白いことやりたいね!」「今度は何をやらかしましょうか?」と、会っては飲み、飲んではいろいろな話で盛り上がっていました。
まだまだ元気いっぱいで働き盛りの30~40代。時間と労力を惜しまず、本当に熱心に〝よく遊びよく学べ〟を地で行くお付き合いを楽しんでいました。
結果としてやり遂げたことも多く、筑後地区療育マップ(全4版)や久留米市の公式サポートブック〝もやい〟(興味のある方は市のHPを参照ください)の発刊等、それなりに成果もありましたが、やらされてやったことや仕方なしに取り組んだことは何ひとつなく、全てが「自分たちがやりたいと思ったことを、面白がってやる」ということを大切にした結果です。

また、困ったときや、わからないことがあるときに、電話一本でつながる関係も嬉しいものでした。
「吉永先生、感染症のことでちょっと聞きたいことがあるんですけど」とか、「早川君、今診察に来とる子のお母さんから園のことで相談受けたっちゃけど、こげなときはどげんすりゃよかとね?」とか、自分の専門外の様々な相談に対して一緒に支援することができるのです。
〝連携〟とは、机上で作られた絵に描いた「仕組み」ではなく、人と人との〝信頼関係とコミュニケーションの形〟であるということを私達は実感し、かつ実践していました。

師であり、同志でもあった、仲良しの吉永先生とお別れした後、数々のエピソードを思い出すたびに喪失感が膨らんでいますが、亡くなる寸前に何度か病室を訪問した時に先生から教えてもらったことがあります。
すでに話しかけても反応がほとんどなく、言葉もないと聞き、ショックと戸惑いの中での面会でしたが、お顔を見て話しかけると不思議と聞いてもらっている気がしました。
言葉もないのに、返事をしてもらっている感じがしました。
一方的にしゃべっているだけなのに会話をしているようで、まるでカウンセリングを受けたかのように、励まされる思いがしたのでした。

そんな先生との最後のやりとりを思い出しながら、ふと思いついて、先生の著書「子育てのそばにいる人はだれ?」を読み返しました。
『どんな相談かわかりませんでしたが、相談先がわからないなら、それだけでもう私の出番かもしれません。ともかく、お会いすることにしました。』
育児療養科の初期の頃の言葉です。
「何ができるかわからんでも、役に立たないかもしれんけど、まずは話を一生懸命に聞くこと。〝そばにいる〟ということが大事なんよ。」と、先生の優しい声が聞こえてくるようでした。

「吉永先生ありがとうございました。先生の分まで、子ども達とそのご家族のそばにいれるように頑張ります!見守っていて下さいね!」
とても、辛いお別れではありましたが、たくさんの感謝と、大きな決意で胸がいっぱいになるお別れでもありました。
吉永先生、安らかに…。

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