こどもの眼 10月号 園長 早川 成
「こどもの眼」
~ せっかくの季節 ~
園長 早川 成
「えんちょうせんせい、いっしょにおべんとうたべようよ!」
「おっ、いいね。じゃあいっしょにたべよう!」
「うん。せっかくだしね!!」
つい先日、年長組さんと高良山に行った時の男の子との会話です。
この〝せっかくだし…〟というのがいいですよね。
こんな洒落た言いまわしができるようになるには、それなりに会話やコミュニケーションの経験が必要でしょう。
おうちではご家族と、園ではお友達や先生たちと、たくさんやりとりがあってこその成長です。
森の中をおしゃべりを楽しみながら歩き、おなかをペコペコに減らして目的地にたどり着き、持ってきたおにぎりの数や中身を見せ合いながら、「やっぱり山で食べるおにぎりは最高やね!」とかぶりつく、その全てが〝せっかくだしね!〟の一言に込められています。秋の季節に心地のいい一日を過ごすことができました。
さて、皆さんは「イグノーベル賞」というものをご存じでしょうか?
ノーベル賞のパロディーとして1991年に創設された、「人々を笑わせ、考えさせた研究」に与えられる賞で、世界中の5000を超える業績から、毎年10程度の個人や団体が選考されています。
今年も9月の半ばに受賞者が発表されましたが、我が国からは「電気を流した箸やストローが食べ物の味を変える」という研究が栄養学賞を受賞しました。白ワインを赤ワインの味に変えたり、減塩食の塩味を1.5倍に増強したりできるそうです。
他には、二つの鼻の穴の鼻毛の本数が同じかどうかを調べた研究に医学賞、肛門認証センサー等により排泄物を監視・分析するトイレの発明に公衆衛生賞、見知らぬ人が上を向いて歩いているのを見たらどれだけの通行人が立ち止まって上を向くかという実験に心理学賞、教師が退屈そうに授業をすると生徒も退屈するという研究には教育学賞が贈られていました。
実は、日本はこの賞の常連国だそうで、過去にも「バナナの皮はなぜ滑りやすいか?」「股の間から物体を逆さまにみると小さく見える」等のユーモラスなテーマで受賞していますが、私は受賞者の幼少期を知りたくなると同時に、うちの(当園の)子ども達にもその才能を強く感じます。
前述の「股のぞき効果」で2016年に受賞した立命館大学の東山教授は「面白いという想いが学問の原点にある。」「〝役に立つ=良いこと〟が唯一の価値観になると、仕事や生活が息苦しくなってしまわないか?」「効果や速さだけでなく〝人を笑わせ、考えさせること〟の大切さを見直す時期にきているのでは?」と語っています。
こんな発想は子どもの頃にこそ育つ感覚でしょう。
子ども達には、子どもの時期を、子どもとして、子どもらしく過ごして欲しいと心から願います。
年長組では、9月1日の園長スペシャル以後、今年も「研究所」の発足に向けて動き出しました。
いったいどんな研究が登場するのか今からワクワクしています。
また、今年は園庭の環境が整わない分、お部屋での遊びを工夫したり、公園や農園、森や山に積極的に出かけたりと、遊びを満喫できるように保育者たちは様々な保育を考えています。
子どもにとって伸び盛りのこの時期は、毎日が〝せっかく〟の連続なのです!
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