こどもの眼 7月号 園長 早川 成
「こどもの眼」
~ほうれん草と雑草~
園長 早川 成
6月の初め、年長組の教師が子ども達に初めて〝キャンプ〟の話をした日のことです。
出かけるために職員室の階段を下りていくと、園庭にいた年長の女の子から声をかけられました。
「どうしたの?」と聞くと、「園長先生、キャンプ一緒に行こうね!」と言うのです。なんて嬉しいひと言でしょう。
私が「うん、一緒に行こうね!」と応えると、今度は男の子が走ってきて「園長先生、一緒にキャンプ行こうね!」と言いました。隣にいた女の子から「もう私が誘ったから言わんでいいと!!」と速攻で叱られていたのには笑いましたが、それにしても、なんと素晴らしい子ども達でしょう!
私はこのように「感じたことや思ったことを、その時すぐに、素直に、自分の言葉で伝える。」という、何でもないようなことが、実はとても大切なことだと最近、強く思うのです。
会社の新入社員教育では、「ホウレンソウを大切に」とよく言われます。
「報告・連絡・相談」のことですが、最近はホウレンソウよりザッソウが大事になっていると聞きました。
「雑談と相談」のことだそうで、最近の若者たちは雑談ができなくなっているというのです。
「雑談」は話のきっかけも曖昧ですし、結末の見通しも立ちません。
双方向の対話なので、相手に合わせて臨機応変さが求められ、マニュアルも通用しないでしょう。
そう考えると、対面でのコミュニケーションが苦手なSNS世代には確かに難しく感じられるかもしれませんね。
「今日ね、雨降っとらんけど傘持ってきた。長靴は履いて来んやったけどね。」
「雨って降るかと思ったら降らんやったり、降らんと思ったら降ったりするもんね。」
「うん。だけん傘持ってきた。念のためにね。」
「園長先生も、今は降ってないけど古賀先生に傘借りて置いとるっちゃん。念のためにね!。」
「あっ、ボクのと一緒の青色やん!」
「ほんとだ、同じ色やね!」
たわいのない会話ですが中身の濃いやりとりだと思いませんか?
〝念のためにね〟という彼の言葉がとても気に入ったので真似して返したら、二人の距離がぐっと縮まった感じがしました。
それが〝同じ色やん!〟という言葉につながったのだと思います。
60歳と5歳児に仲間意識が生まれる雑談の魅力です。
また、「相談」にしても過去には、「何で僕だけりす組なん?」「幼稚園をやめるにはどうすればいいですか?」というハイレベルの相談を受けたことがあります(笑)
当園には、雑談を楽しみ、嫌な気持ちや疑問を言葉や態度でストレートにぶつけることができる子がたくさんいます。
私はこの「雑草」の力をもしも数値化することができれば、当園の子ども達はかなり高いレベルにあるのではないかと思います。
自分が出せず気持ちに蓋をして苦しんでいる若者が増えている中、なかなか捨てたものじゃないと思い、振り回されながらも楽しんでいます。
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