こどもの眼 6月号 園長 早川 成
「こどもの眼」
~そんなところに?~
園長 早川 成
梅雨の季節がやってきましたね。
ある日の朝、やってきた女の子に「なんだか雨が降りそうだね。帰るまで降らないといいけどなぁ。」と声を掛けると、その子は振り返って「私、雨大好き!」と言いました。
「へ~っ雨が好きなんだ。どうして?」と聞くと、「だって、ビショビショになりたいもん。」と言って、笑いながら通り過ぎて行きました。
私は「ビショビショになりたい…か、なんかいいなぁ」とちょっと嬉しくなり、そして、ふと小学生の時のことを思い出しました。
それは、学校から帰る途中、突然のカミナリと共にどしゃ降りの雨が降り出し、友だちと大騒ぎしてゲラゲラ笑いながら帰ったのでした。
詳しくは覚えていませんが、とにかく最高に面白かった記憶があります。
そういう感覚って、いつのまにか忘れてしまっていますね。
びしょびしょとか、ドロドロとか、ぐちゃぐちゃとか、ようするにメチャクチャで無秩序な感じですが、そんな感覚って、大人には良くないことが多く、できれば避けたいことばかりだと思います。
けれど、子ども達にとっては大好きな感覚なんですね。しかもそれが突然や偶然であるほど面白がるみたいです。
子どもという生き物は、「予期しない最悪の事態」が大好物なのです(笑)
さて、ご承知のとおり新園舎の建築が進んでおり、施主である園と設計者や施工業者との会議が定期的に行われています。
工事の進捗に合わせて、内装や設備関係の具体的な打ち合わせが始まっていますが、その中で、当園ならではの検討事項が意外と多くあることに気が付かされています。
例えば、ボタンやスイッチの取り付け場所については、「そんなところにあったら絶対に押すでしょうね。もう少し高い位置にしてください。」というようなやりとりです。
隙間だったら「必ず潜り込むかスリ抜けます。」
穴の大きさだと「木の枝や指を突っ込むでしょうね。」
段差や柵は「間違いなく上ったり飛び降りたりします。」…と、こんな感じです。
他にも、ぶら下がる、引っ張る、倒す、踏みつける、ザラザラになる、ビショビショにする等々いろいろありますが、どんな構造にするか、どこに何を設置するか、どんな素材がいいかを検討するのに、一つひとつ子ども達の行動特性を説明しなくてはならず、大笑いしています(時々は苦笑いですが)。
汚さないように神経質になるのは嫌なので汚れてもいいようなものにしたいとか、壊さないように口やかましく注意したくないので、壊れるような構造にしたくない等々、見た目の美しさやおしゃれな雰囲気よりは、機能重視の構造になるようお願いをしています。
業者さんにしてみれば当園の要望は「そんなところに?」と、他園に比べて配慮の視点が異なるかもしれませんが、天使の子どもたちと天使流の遊びに合わせ、最適な環境を創るのに協力いただいています。
やっぱり器は中身によって選びたいのです。
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