こどもの眼 4月 園長 早川 成
「こどもの眼」
~ おおらかな成長 ~
園長 早川 成
いよいよ新年度が始まりました。
始園日の朝、子ども達が来るのを楽しみに門に立っていると、年長組の男の子が走ってやってきました。
見るとお父さんが自転車で後ろを付いてきています。
「あれっ、お父さん置いてきとるやん。年長さんになって、走るのが早くなったっちゃない?」と私が言うと、その子は立ち止まり、振り返って言いました。
「オレ、とまと組の時から早かったばい!」
〝鼻を高くして言う〟とはこういう表情だというお手本のような顔でそういうのです。
「へぇ~、木登りが得意なのは知ってたけど、走るのも早かったっけ?」と私が言うと、「そうだよ!知らんかったと?」と言わんばかりに、ますます得意げな顔で、門を入って行きました。
「もう年長さんか。大きくなったなぁ…」と成長を祝う気持ちでかけた言葉でしたが、見事に一本取られてしまいました。
さて、このやりとりで私が嬉しかったのは、彼が自分の成長の起点をとまと組(年少組)に置いてくれていることです。
「最初から早かった」ではなく、「たんぽぽ組(年中)でも早かった」でもなく、「とまと組の時から…」という言い方は、その子が自分の成長(この場合は足の速さ)を自覚した起点が、園生活の始まりである「年少・とまと組さん」であるということだと思うのです。
これから卒園までの一年間、年長組さんの成長には目を見張るものがあります。
きっと、できるようになることや、わかるようになることがたくさんあることでしょう。
〝とまと組の頃の自分〟を出発点として、その一つひとつに成長の手応えを感じて欲しいと思います。
ところで、随分昔のことですが、年長組の男の子が、朝の門で「園長先生、ボクね、いつのまにか幼稚園が楽しくなってたよ」と言ってくれたことがあります。
入園後、かなり長い間、浮かない表情で登園していた子で、園生活を楽しむことができるようになるまでに、随分と時間がかかっていましたが、それだけに卒園間近になってのこの言葉がとても嬉しかったのを今でも思い出します。
特に印象的だったのは、この〝いつの間にか〟という言葉で、私はこの表現がとても気に入っています。
子ども達が、いろいろなことができるようになったことに驚いたり褒めたりしたときに、「だってレッスン行きよるもん」とか、「○○で習ったから」と、その理由を教えてくれることがよくあります。
それはそれで嬉しいのですが、私は、子どもの成長に感動している大人をよそ目に、当の本人は「前から知っとったばい」とか「いつの間にかできとったっちゃん」と、さらりと、あっけらかんとして言うのが子どもらしくて大好きです。
幼児期は、何かができるとかできないとかに注目し過ぎず、力を抜いて、おおらかに、私たち大人も楽しんで過ごしていたいと思っています。
一年間、大いに楽しみましょうね。どうぞよろしくお願いします。
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