こどもの眼 3月号 園長 早川 成
「こどもの眼」
~ それぞれの時(とき) ~
園長 早川 成
夢を見ました。
在園児の男の子が、なぜか夢の中では小学生になって登場してきました。
園生活では、「ダメだよ!」とか「違うよ!」とか言われることが度々あり、キツイ思いもしていると思いますが、夢の中ではとにかく授業が面白くて仕方がないようで、どんどん夢中になっていくのです。
好奇心とやる気に溢れ、目を輝かせて没頭する姿は、本当に生き生きとしていて、とても幸せな気持ちで目が覚めました。
出勤する車の中では、「好きなことにのめり込んでいるときは、ホントにいい顔するんだよなぁ。あの表情を大事にしなくちゃいけないな。」と思うと同時に、「これじゃいけないとか、こうなってほしいとか、上手くいかないことであれこれ悩むより、もっともっと好きなことを好きなだけして、無我夢中で遊べるような保育を追求して行きたいなぁ。」と改めて考えさせられました。
しかしながら、一方では「主体性を大切にといっても子どもの好き勝手にさせると、集団行動がとれない子になる。」という意見や、「自由に遊ばせてばかりだと、人の話が聞けない、着席ができない子になるのでは?」という心配の声を耳にすることがあります。
皆さんの中にも「ノビノビしすぎると小学校に行って大丈夫かな?」と心配している方がいらっしゃるかもしれませんね。
私は、指導によって集団行動がとれるようになったとしても、言うことを聞くだけで主体的でなくなることの方が心配です。
また、話が聞けず離席が多いのは、自由に遊びすぎたからではなく、むしろその逆で遊びが足りないからだと思っています。
自分で遊びを見つけ、のめり込んで思う存分遊ぶ、そんな主体的な遊びの経験が多ければ多いほど、人の話を落ち着いて聞くことができると思っています。
前述の夢に出てきた男の子は、まさにそのことを小学生の姿になって伝えに来てくれたように感じています。
とはいえ、卒園や進級を迎えるこの時期は、我が子の成長を振り返り、できないことばかりに目が向いて、不安になることが多いかもしれません。
高校の親友が劇団四季の俳優をしています。
公演中の「バケモノの子」に主人公「熊徹」のライバル「猪王山」役で出演していますが、牙が生えてこないことに悩む息子の一郎彦を励ますシーンにこんなセリフがあるそうです。
「変化の時期はそれぞれなのだ。早い者もいれば遅い者もいる。お前はお前の時を待て。」
友人自身がその昔、役づくりで悩んでいるときに師匠である浅利慶太代表(故人)に「焦るな。きっとできるようになる。お前はお前の時を待て、お前自身でいいんだ。」と言われ、それが今でも心の支えになっているとのことです。
子育てにも、保育にも、不安や悩みがつきものですが、子ども達には、それぞれに与えられた〝時〟があることを信じ、焦らずに向き合っていきたいと思います。
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