こどもの眼 12月号 園長 早川 成
「こどもの眼」
~ できること ~
園長 早川 成
「園長先生、シャツ入れれる?」
年中組さんと〝わちゃわちゃの森〟に行ったとき、突然女の子が言いました。
あまりに突拍子もないことだったので上手く聞きとれず、「えっ?なに?」と聞き返すと、今度は動作付きでズボンにシャツを入れながら「シャツ入れれる?こうやってやるの…」と説明してくれました。
「あぁそういうことね。うん、先生もシャツ入れれるけど〇〇ちゃんも上手だね。」と答えると、「ママに教えてもらったと。」と嬉しそうに教えてくれました。
まさか森の中でこんな話が聞けるとは思いませんので、今?ここで?と一瞬思いましたが、子どものタイミングってこんな感じですよね。
それにしても、何かが〝できるようになる〟ということは、子どもにとってこんなにも嬉しいことなんだと改めて感じました。
またある朝のことです。門に向かっていると年長の男の子が私を呼び止めて言いました。
「園長先生、ぼくね、風を操れるようになったばい。」
「エーッ?風を操れるようになったぁ!?」
これまた絶対に予測がつかないまさかの発言でしたが、私が「忍者の技でみたことあるけどスゴイやん!」と返すと、その子は両手の指をフレミングの法則の形にして、カチャーシー(沖縄の踊り)のように動かしながら空を仰ぐのです。
見ていると風を感じているのがわかります。
そして、その子の手の動きを見ながら私も風を感じてみると、確かにその子が風を操っているように思えてくるのです。
ちょっと凄いと思いませんか?「五感を育てる」は当園の教育目標の一つですが、風を操るまでに成長するとは…(笑)園長としてこんなに嬉しいことはありません。
風を操りたいと思う感性に感動し、このまま育っていって欲しいと心から願ったのでした。
サッカーのワールドカップが始まり、わくわくドキドキの毎日です。
大会前、あるTV番組で過去の大会やスーパープレイを特集していましたが、アナウンサーが出演者に質問しました。
「技術や戦術がどんどん進化しています。理想のサッカーに近づいているようですね?」
それに対する岡田武史さん(元全日本の監督)のコメントが素晴らしく、とても印象的でした。
『「理想のサッカー」みたいなものを皆が目指してサッカーが画一化するのは望ましくないですね。国によって気候、民族、文化、歴史等が違うんです。様々な国々が作り上げた「自分達のサッカー」がぶつかり合うからワールドカップは面白いんですよ。今大会、楽しみにしています。』
私にはまるで「ワールドカップは〝運動発表会〟であり〝おもしろ発表会〟なんですよ」と言っているように聞こえました。
子ども達には、〝できるようになる〟という結果が大事なのではなく、〝できること〟が嬉しくて楽しいってことが大切だということを、伝えていきたいと思っています。
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