こどもの眼 10月号 園長 早川 成
~ 主体的・対話的で深い学び! ~
園長 早川 成
「園長先生、夏休みにね、おじいちゃんとおばあちゃんちに行った。」
「へ~、おじいちゃんちはどこ?」
「新幹線に乗って行った。」
「ふ~ん、遠いのかな?」
「新幹線で、お弁当食べた。」
「あ~、いいね。新幹線ってさ、お弁当食べれるよね。」
「うん。それと、温泉に も行った。」
「いいなぁ。おじいちゃんもおばあちゃんも喜んだやろ?帰るとき、寂しくなかった?」
「うん。だってね、お父さんが一人でお留守番してたから、帰ってきたと。」
2学期が始まってすぐ、年長組の女の子から聞いた夏休みのお話です。
孫が遊びに来た時のおじいちゃんの気持ちになって聞いている私は、楽しんだ分だけ別れが辛かったのではないかと思って最後の質問をしたのですが、想定外の返事にキュンとしてしまいました。
新幹線に乗っているときも、お弁当を食べているときも、温泉に行った時も、嬉しくて楽しいんだけれど、どこかでお家に残してきたお父さんのことが気になっていたんだろうなと勝手に想像し、感動してしまったのです。
さて、我が国の今後の教育は、幼稚園から高校まで一貫して、「主体的・対話的で深い学び」という方向性が示されています。当園がこども達の〝主体性〟を大切にした保育を目指していることは、「運動発表会」でも、「おもしろ発表会」でも感じていただけると思いますが、更に〝対話的〟であることにもご注目いただきたいと思います。
冒頭にご紹介したエピソードは、私の妄想が過ぎるところもありますが、年長さんにもなると、自分自身の体験や思いを、自分の言葉で、こんなにも豊かに表現することができ、対話(双方向のやりとり)ができるようになっていて、成長を感じます。
皆様にも、何気ない普段の会話で、そのことを意識し、耳を傾けていただきたいと思います。
先日受けた研修で、青少年が近年「死にたい」ではなく「消えたい」と言うようになっているという話を聞きました。
諸外国の中で、日本の若者の自己肯定感が特に低いと言われていますが、肯定できないだけでなく、存在そのものを消してしまいたいと思っていることには大きなショックを受けます。
私たちは、足に自分の体重を感じることで地面に立っていることを感じ、何かに触れることでそこにいることを自覚することができます。
つまり、存在感を自覚するには何かしらの相手が必要ということです。
子ども達が〝今ここにいる〟と感じるのが、地面ではなくお家や園であって欲しいし、物ではなく〝人〟と触れ合う中に存在を感じてほしいと思います。
主体的でいられる場所や対話する相手が傍にいるという環境を自分の居場所と感じ、〝ここにいる〟〝そのままでいい〟という存在感に包まれて育っていって欲しいと切に願っています
COPYRIGHT © 2019 KURUME TENSHI KINDERGARDEN All Rights Reserved.