こどもの眼 4月号 園長 早川 成
「こどもの眼」
~ やってみたい! ~
園長 早川 成
2019年。創立70周年YEARのスタートに、当園は「子どもの主体性を大切にした教育」をテーマに掲げて10年後の80周年を目指しました。今年は早くもその後4年目を迎えることになります。
2020年度は「こどもファースト」を年間テーマに、何事もまず子どもの姿から出発すること、新しい保育を〝創る〟ことを目標にしました。
昨年2021年度は、更に「遊びとは何か!」にこだわり、「子どもと遊びの追及」をテーマに保育カリキュラムや行事を見直してみました。
その結果、一昨年にコロナ禍の中で、三密回避のためにやむを得ず誕生した〝運動発表会〟をそのまま継続しました。
大勢の人に囲まれて賑やかに行われる一大イベント「ザ・運動会!」から形を変え、お友達と一緒に身体を動かすことを楽しんでいる様子を、特別な行事ではなく、日常の保育に近い状態で観ていただく「運動参観日」へシフトチェンジしたものです。
派手さはありませんが、子ども達の緊張度は運動会と全く違い、特に昨年は久しぶりに園庭で開催できたこともあり、いつものようにリラックスして遊んでいる雰囲気になったと思います。
また、昨年度は例年の「作品展」を〝おもしろ発表会〟に変更して行いました。
従来の作品展では、保育で絵画や制作を楽しんだ結果でき上がったものを展示して、ご家族で見に来ていただいていました。
作品展でもその日のために作品を作るという特別な保育はしていませんでしたが、おもしろ発表会は更に子どもの主体性を重視し、作品ではなく、子ども達がそれぞれに興味を持ち、楽しんで遊んでいる有形無形の「おもしろさ」を見ていただくという発想で誕生しました。
ですから、遊んでいる様子を写真に撮ったもの、楽しんでいる過程を説明したもの、作ったものや集めた物などを、子ども同士の会話や保育者とのやり取りが伝わるように掲示しました。
並んでいるものも、できあがったもの、まだ途中のもの、上手くいかなかったものまで、様々な〝おもしろさ〟を感じていただけたのではないかと思います。
皆さまからいただいた感想の中には、従来の作品展の方が見応えがあったという声もありましたが、確かにそうだと思います。
しかし、見応えとしては物足りなくても、味わい深かったのは〝おもしろ発表会〟だったのではないでしょうか
私自身の感想では、明らかに今年の方が「子どもの世界」でした。
どの子が何をおもしろいと思っていたのか、同じことをしていても楽しんでいる中身が違うこと、してもいいし、しなくてもいいという自由さがあったことがわかります。
そして、保育者はどんな場面に、子どものどのような姿に気付き、どう関わったのかということも伝わってきます。
そんなことを味わいながら部屋を回っていると、全体としての見映えや華やかさはなくても、子ども達の息遣いが聞こえてくるようで、それぞれの個性や多様性がじわりと染みてきました。
活動の成果や教育の効果ではなく、子ども達の心が動いた軌跡を感じ取ることができ、成長の手応えを味わうことができる発表会になったのではないかと思います。
さぁ、そのような中で2022年度を迎えました。
初日が自由登園となり始園日を延期する波乱のスタートとなりましたが、まだまだ先が見えないコロナ禍にあっても、時代は大人も子どもも、アクティブラーニングです。
何事にも、創意工夫とチームワークで乗り切って行きましょう。
さて、全教職員で共有している今年度のテーマは「〝やってみたい〟を保育にする!」です。
保育者は、子ども達の〝やってみたい〟を見つけ、自分達の〝やってみたい〟を実践することに一生懸命になります。
つまりは、今年度も「よく遊ぶ!」ということです。
3月末の研修で、講師が「幼児教育の基本は〝よく遊び、良く遊べ〟です」と言っていましたが、その実践が目標です。
ただ、子どもの〝やってみたい〟を見つけるには、保育者は子ども達をしっかり見て、その姿に気付かなければなりません。
目に見える表情や動きだけでなく、心の声を聴き、その思いを感じることが必要です。
また保育者には、子ども達が〝やってみたい〟と思えるような保育環境を創ることが求められます。
子ども達のことを思い浮かべながら、「こんな遊びはどうかな?」「こんな保育ができたらいいな!」と、先生達にも〝やってみたい〟にチャレンジして欲しいと思います。
子ども達と保育者の〝やってみたい〟が、卵が先かニワトリが先かではありませんが、お互いに後になり先になりながら、絡み合い、刺激し合って次々と生まれてくることに期待しています。
いよいよ始まるこの一年、そんな〝やってみたいワールド〟に皆でどっぷりと浸かり、遊びながら成長していくのを楽しみにしています。
保育や行事、様々なことに今まで通りでないことや、やったことがないものが生じるかもしれませんが、子どもと保育者の〝やってみたい〟をベースにした保育、「シュタイナー教育」ならぬ「したいなぁ教育」に挑戦したいと思います。
保護者の皆様の、ご理解とご協力をお願いいたします。
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