こどもの眼 12月号 園長 早川 成
「こどもの眼」
~ あぁ勘違い ~
園長 早川 成
ある朝、やってきた男の子に声を掛けました。
「おはよう!〇〇ちゃん。おっ、髪切ったと?」
ニヤッと笑った顔で返ってきた返事は…、「ツーブロック!!」
今どきの子は散髪したと言わずに、ヘアースタイルで答えるのか!?
私は笑いながら、「しゃれとんしゃーですねぇ」(お洒落ですね)と、返すのが精一杯でした。勘違い?時代遅れ?3歳児と言えども侮れませんね。
どうもおみそれいたしました。
また、こんなことも。
「ほらほら〇〇くん、その土は植木鉢から出したらいかんよ!土がなくなったらお花を植える時に困るけんね!」
男の子が植木鉢の土をスコップですくって外にこぼしていたので声をかけました。
ところが、注意をしようと思って近づいてみると、植木鉢の横にバケツが置いてあって、その中に土を移し替えているのでした。
「あれ?何しよると?」
「幼虫を入れると。」
そうです。土をこぼして遊んでいるのではなく、見つけた虫の幼虫を入れるため、バケツに移し替えているのでした。
「そうやったとね。ごめんごめん。幼虫を入れるんなら砂じゃなくて土じゃないといかんもんね。よく知っとったね。偉いやん!」
植木鉢の陰で見えなかったとは言え、とんだ勘違いに反省しきりです。
叱るどころか褒める結果となりました。
子どもは、〝子どもの世界〟を生きています。
大人の価値観で判断したあと、子どもの思いに気が付き「一理あるな」と思うことがあります。道理でものを言う我々に対し、子どもの行動や言い分は感覚的です。
よく観察し、じっくり話を聞いてみると、誤解であったり、決めつけてしまっていたり、勘違いの恐れがあるので気をつけなければなりません。
「しない」「なんで?」「だって、したくないもん」とか、
「嫌だ」「どうして?」「あのね、嫌だから」等、ズッコケそうなやりとりの中に、言葉では言い表せない伝えたいことが山ほどあるのです。
理由にならない自分勝手もたくさんありますが、この時期の「だってね」や「あのね」の次にくる思いにしっかり向き合っておきましょう。
子ども達は受け止めてくれる相手には安心して吐き出すことができますが、はねつけたり押さえつけたりしてしまうと感情に蓋をしてしまいます。
本心を封印している姿を「素直ないい子」だと勘違いをされてしまうのは、子どもにとっては辛く、大人にとっても残念なことだと思うのです。
朝、職員室にいると、「園長先生、早く降りてきてよぉ」と外から呼ぶ声がしました。「わかった。今すぐ行くね!」と門に向かい、「おまたせ。遅くなっちゃったね。」と言うと、「やっと来た。早く遊ぼう!」と言って群先生の手を引いて行ってしまいました。
「あぁ、そういうことだったのか…」と、勘違いに唖然としましたが、何の遠慮もない子どもらしさと、なかなかの頭脳プレーに、あっぱれ!をあげたいと思います
COPYRIGHT © 2019 KURUME TENSHI KINDERGARDEN All Rights Reserved.