こどもの眼 9月号 園長 早川 成
「こどもの眼」~ 終わりの始まり ~ 園長 早川 成
教会の解体が始まって5日目の7月30日、塔屋が壊されました。
年長さんが毎朝鳴らしていた鐘が降ろされ、シンボルである十字架が取り外されました。
屋根の一番高いところにいる現場監督さんに向かって子ども達が何やら叫んでいるので、「カッコイイ!」とか「頑張ってね」とか、声援を送っているのかと思って近づいてみると、ナント「こらぁ、教会を壊すなぁ!」「十字架を倒してどうすんじゃあ!!」と、騒いでいるのでした。
笑いながらでしたので、怒っているわけでも泣いているわけでもなかったのですが、子どもたちなりに、教会が壊されていく様子を見て感じるものがあるようでした。
皆様に教会解体のお知らせをした翌日、年長組の男の子が「教会が無くなったら鐘はどうなると?」と聞いてきました。
お屋根の十字架、僕たちの鐘、私たちの教会が無くなってしまう…。
そのことを一番身近に感じ、関心を持って見守ってくれているのは、この子たちかもしれないなと思いました。
教会が幼稚園を建てて72年、共に歩んできたことの証が、子ども達の中に在ることを嬉しく思います。
さて、今回解体された教会は、1978年に建てられ、諏訪野町から幼稚園と共に移転してきました。
当時、牧師であり園長であった父にとっては大きな決断と責任を伴う大事業だったと思いますが、高校1年生の私はそんな苦労を知る由もありません。
夏休みに遊びたいのを我慢して引っ越したこと、自分の部屋をどこにするかを弟と話し合って決めたことなど、懐かしく思い出します。
そういうわけで、教会であり我が家でもあった、思い出がたくさん詰まった場所が壊れていく様子を、時に感傷的になりながら毎日眺めていましたが、そんなときにふと、父が70で退職する最後の礼拝の説教を思い出しました。
タイトルは〝終わりの始まり〟 牧師は引退するが、残りの人生は伝道者として青少年の居場所づくりに捧げる!という、聖職としての志の表明でした。
建物は倒れましたが、教会ではこれから新しい歴史が始まります。
こども園も、園庭の環境が大きく変化した中、新たな夢を描き始めています。まさに、〝終わりの始まり〟です。
75歳で亡くなった父とは、園長としての夢など語り合うこともありませんでしたが、今になって、新たに父親との関係が始まったような気がしています。
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