こどもの眼 7月号 園長 早川 成
「こどもの眼」
~ 繰り返しの力 ~
園長 早川 成
先月、「当たり前」は人によって違うという話をしました。
森に木が生えているというのは当たり前ですが、そこで何をするかは一人ひとり違います。
例えば、木に登るのが好きな子は、森に入ると登れそうな枝振りのいい木を探しますが、木登りに興味がない子はそこにいろいろな木が生えていることさえ目に入らないかもしれません。
「木を見て森を見ず」という言葉がありますが、「木を見たら枝も見る」と「森にいて木を見ず」というぐらい違うのです。
今年の年長組は、すでに5回も森遊びに行きました。
〝わちゃわちゃの森〟に出かけるようになって異例の早さです。
一人ひとりの個性と集団の多様性を大切にして、教師主導ではなくこどもの主体性を引き出すために、先生たちは回数、つまり繰り返しが必要だと考えました。
森で何を見つけ、何をしようと思いつくのか観察していると、本当に一人ひとりが違うし、遊びが見つからない子もいることを目の当たりにしました。
見つけたものや、やりたいことを出し合い、意見を聞きながら、「こんなこともできるよ!」とヒントを与え、「こんなのはどうかな?」と選べるようにしてみましたが、なかなか難しいようです。
やってみたら思ったより楽しくなかった、他のものが目に入ったらそっちに行きたくなった、あれこれ迷っていたら帰る時間になってしまった…なんてことがひっきりなしに起きているのでしょう。
「今度行ったらあれしよう!」と思っていても、その時になると忘れていたり気が変わったりということもあると思います。
子どもたち自身が思ったようにならないのですから、我々の思惑通りにいかないのは当たり前です。
それでも、食べられる木の実があるとわかった子たちは野イチゴやビワやスモモを探すようになっています。どこにどんなものがあるかが気になり始めた子は探検を楽しめるようになってきました。
のこぎりを使いたい子は竹を切ってコップや一輪挿しなどモノづくりに夢中です。
スコップを使いたい子は、蛇の落とし穴を作るといって張り切っていました。
焚火をしたい子はマッチが一箱なくなるほど何度も何度も火をつけるのに挑戦していますし、秘密基地に興味を持った子は、竹を使いブルーシートやロープを駆使して楽しんでいます。
このように、少しずつ、きっかけをつかんではそれぞれに遊び始める様子に、子どもたちの成長には〝繰り返し〟が必要だということを痛感しています。
年長組のキャンプが近づいてきました。
日々の〝遊び〟と〝生活〟の集大成、森や川で思う存分遊びたいと思います。
先日、いかだ作りに使うペットボトル持参で登園してきた子のお母さんから、お父さんが2ℓのお茶の一気飲みを強要されているという話を聞いて笑いました。
そんな親子のエピソードが子ども達の成長に色を添えているのも嬉しいことです。
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