こどもの眼 5月号 園長 早川 成
「こどもの眼」
~ 親と子の関係 ~
園長 早川 成
年長さんとの会話1
「群先生って、園長先生の子どもなん?」
「うん、そうだよ。」
「何で?大人なのに?」
年長さんとの会話2
「群先生は早川先生の子どもなんだよね?」
「うんそう。早川先生がお父さん」
「え~っ?」
4月から長男が園で働くようになりましたが、子ども達は、しばらく何が何だかわからないようでした。
私は冒頭の会話のように子ども達の質問に答えながら、親子の関係を説明することがこんなに難しく、また面白いことであることを発見し、大いに楽しませてもらいました。
子ども達の混乱を紐解いてみると、「園長は大人で、その子どもも大人なんて、どういうこと?」
「ボクたちは子どもだけど、群先生も子どもっておかしいやん?」
「群先生が園長先生の子どもっていっても、園長先生がお父さんってことはないやろ?だって、自分のお父さんはこんなんじゃないもん。」って感じでしょうか?
自分とお父さんの親子関係を、園長親子に置き換えて理解することが難しいんですね。
一生懸命わかろうとしている姿がとても微笑ましく、いい時間でした。
結局は、「群先生は園長先生の子どもなんだよ。だってね、おんなじ早川やけん!」ということで決着したようです(笑)
さて、とっておいた新聞の切り抜きの中から、「ダンゴムシの母」という記事を見つけました。
「先日、ダンゴムシのお母さんをみとりました。12時間かけて子どもを産み、息絶えました。
我が家には数百匹のダンゴ虫がいます。5月頃、6歳の息子が幼稚園のお庭から30匹ほど持ち帰ったのが始まり。マンション暮らしなので放す庭もなく、バケツに土を入れて飼い始めました。」という書き出しで始まるお母さんの投稿です。
このあと、息子さんはすぐに飽きてしまったようですが、ダンゴムシに情が湧いてしまったお母さんは飼育ケースや腐葉土を購入して世話をし始めます。
毎日えさをやるたびにしゃがみ込んで眺め、かわいがるようになります。
ダンゴムシを観察しながら、「どんなに増えても縄張り争いはせずに仲良く過ごし、雌がおなかに幼虫をたくさん抱えて歩いている姿は本当にけなげで…」と感情移入していく様子が書かれていました。
私がこの話に惹かれるのは、息子さんに「お母さんは僕よりダンゴムシが大事なんでしょ」と言われてしまうほどお世話に没頭してしまう姿と、「ダンゴムシのお母さん大変そうだよ。」と、ダンゴムシを見せながら息子さんに語り掛けるお母さんの遊び心がとても素敵だと思うからです。
息子さんの興味が冷めてしまっても、お母さんが楽しんでいる姿を子どもに見せ、世話をしていて面白いと思ったことを会話にして伝えようとする〝子育てのスタイル〟がとてもいい感じです。
この記事の最後は、「今朝、息子を幼稚園に送っていき、お母さんダンゴムシの小さな遺骸を園庭に戻すと、息子はそっと手を合わせていました。」と締めくくられていました。お母さんの姿に、子どもはしっかり応えて育っているんだなぁと思いました。
「教育とは、子育てとは」と大上段に構えなくても、何気ない日常の中に、まだまだできることがたくさんあるようです。
我々大人がもっと力を抜いて楽しんでいる姿をみせることが大事なのかもしれません。
先日、バスから降りてくる子に「おはよう!」と挨拶をしていると、新入園児の年少さんが私の前に立ち止まって言いました。「パパとママはおうちにいる!」
まだまだ慣れない園生活の中で、自分に言い聞かせるような決意の一言です。
おうちで見守っているご両親との親子の絆を感じました。
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