こどもの眼 3月号 園長 早川 成
「こどもの眼」
~ いらんこつ ~
園長 早川 成
「コラコラなんしよるね?いらんこつせんよ!」「またいらんこつしよる!何回言うたらわかるとね!」
〝いらんこつ〟とは方言で、最近は耳にしなくなっていますので、ご存じない方もいらっしゃるかもしれませんね。漢字で書くと「要らんこつ」。つまり必要のないこと、余計なこと等の意味です。
数えたことはありませんが、小さい頃から今までに何度言われてきたでしょう?
我が子を始め子ども達に、何度言ってきたでしょう?
皆さんはいかがですか?いらんこつとは言わなくても、冒頭のような場面はよくありますよね?
消毒液のポンプを押して遊ぶ。私の手袋を奪い取って汚す。
出張のためジャケットやスーツ姿の時に限ってズボンに手形をつけたり革靴に砂をかけたりする。
焚火に火が付いたとたんに雪を投げ込む。
園外保育の道中、触ってはダメだと言えば触りたくなり、登ってはいけないと言えば登りたくなる…と、数えたらキリがありません。
何度叱っても、いけないことだとわかっていても、ついやってしまう。
私が思うに、子どもというのは〝いらんこつ〟をする生き物なのです。
「コラ~っ、いらんこつすんな!」と雷を落としたくなりますが、キラキラときれいな眼で、ニコニコと屈託のない笑顔でいらんこつをする子ども達を目の前にすると、「この子にとっていらんこつは大切なこと?」「子どもは、いらんこつを糧にして成長する?」と思えてくるのです。
であれば、〝いらんこつ〟は〝要らんこつ〟ではなく、逆に成長のために〝必要なこと〟だということになります。
今ではもう中学生になる卒園児が幼稚園児だった頃の話です。
買い物に出かけた先で、お店のおばちゃんに「あんた、いっちょん言うこと聞かんね!天使幼稚園やろ?」と叱られました。
お母さんはドキッとしましたが、そのおばちゃんは、「うちの子も天使幼稚園やったとたい。」と笑っていたそうです。
私はこの話を聞いた時、卒園児の保護者がこうしてつながっていくことを嬉しく思いました。
子どもたちがやらかす〝いらんこつ〟を叱りながら、理解して暖かく見守っていて下さることを心強く思いました。
いらんこつをしながら育つ子ども達も天使流なら、いらんこつを受け止めながら育てる子育ても天使流なのです。
その昔、いらんこつをした男の子二人を呼んで話をしました。
Y君は「S君が先にした!」と言い張ります。よくある言い分です。
ところが、それを聞いたS君は「僕が謝ればいいっちゃろ?」と言いました。
私はショックを受け、教師達と「S君にそう言わせないように育てよう!」とこの言葉を心に深く刻みました。
いらんこつそのものではなく、そのあとが大事。そこから何を学ぶかを大切にする。これもまた天使流です。
大変な一年でしたが、大変とは大きく変わるチャンス。感謝と決意をもって進んで行きます。
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