天使こども園ニュース

こどもの眼 2月号 園長 早川 成

  • 2021.02.02
  • 園長

「こどもの眼」
~思い出は重いでぇ~ 
園長 早川 成

ある朝のことです。教師と門のところで仕事の話をしていました。 
「園長先生、〇〇どうします?」「あぁ、あれね。オレが片付けとくけん、いいよ。」「じゃあお願いしますね。すみません。」
教師が立ち去ったあと、近くにいた年長組の女の子たちが会話の途中でハッとしたように顔を見合せたのが気になっていたので、聞いてみました。その時の会話をご紹介します。
「どうしたと?」「何でオレって言ったと?」
「えっ?何が?」「今、オレって言ったでしょ?何でオレって言ったと?」
「あぁ、そういうことね。」「ごめんごめん。すぐにオレって言っちゃうので、小さい頃からよく叱られてたんだよね。何て言えばいいと思う?」
「ボクじゃない?」
「ワタシでしょ!」
…ということで、最後は、「わたし」がいいんじゃないかということになったのでした。
〝オレ〟という言葉遣いを指摘されたのがわかり、さてどうしようかと思いましたが、そのまま会話を続けてみてよかったと思いました。
年長さんは、いろんな場面でいろんなことが気になっているようです。
周りが見えてきたと言うことでもあり、いろいろなことがわかるようになってきたということでもあります。となると、いろいろなことを考えるようになります。
言いたいことや、やりたいことも増えてきますね。
伸び盛りの年長さんは、頼もしくもあり危なっかしくもあり、時には生意気なことも言いますが、全てが成長の証です。子ども扱いして侮っていると、痛いところを突かれることもままあります。
やっつけられないように気を付けて、卒園までの残り少ない時間を楽しみながらお付き合いしたいと思います。

さて、先月号で子どもの頃の思い出について書きましたが、昨年末に84歳になる母親と話をしていて、私が幼稚園に通っていた時のことを聞きました。
お遊戯会を見に来た時に、私のクラスの出番がきたので、入場してくるのを待っていると、いつまでたっても我が子(つまり私)が現れず、結局出て来ないまま終わってしまったそうです。
何かあったのかと思って担任に聞くと、出番直前に友達とトラブルになって機嫌を損ねてしまい、出ないと言ってきかなかったとのこと。
部屋に行くと、大の字になって寝転んで怒っていたというのです。
私は全く覚えていないし、弟と間違えているんじゃないかと疑いましたが、どうやら本当のようで、母親は「あんたは昔からお調子者やったけど、気に入らないことがあると頑固やったんよ。」と笑っていました。

「思い出」というのは、自分の記憶だけでなく、人の中にもあり、他の誰かに気が付かされることもあるということです。
親子、きょうだい、夫婦、友達、先生…等々、人と人との関わり合いの中にある一つひとつのエピソードが、今の自分を創っているということですね。
性格も、考え方も、生き方も、様々な出来事が一片一片積み木のように重なった結果だと思うと、目の前の小さいことも大事にしたいと思えてきます。

生活発表会が目の前です。
私は、舞台に上がらずふてくされていた自分と、我が子の出番を見ることなく終わった母親の思いを重ねながら子ども達を応援しようと思います。
皆様にはコロナ対策で人数制限をしなければならず心苦しいのですが、どうぞ、子ども達の成長を味わいながら観ていただきたいと思います。

ある日、年長さんの廊下で女の子が駆け寄ってきて言いました。
「園長先生、ほら見て!歯が2本抜けた!」
私が「あっホントだ!お姉さんになりよるっちゃねぇ」と言うと、その子がさらに言いました。
「ストローをはさんで、ジュースが飲めると!いいやろ!」
そして、隣にいた子に「〇〇ちゃんは、まだ1本やんねぇ~」と言うのでした。
歯が抜けたことを、こんな風に喜べる子どもが私は大好きです。
そしてその隣にいて、自分はまだ1本なんだけど、何を自慢されているのかわからずに不思議そうにしている子とのコントラストがまた面白くてたまらないのです。
私の周りにはこんな自慢の子ども達がいっぱい。
皆はきっと忘れてしまうに違いありませんが、こんな何気ないことでも、どんなに小さな出来事でもいいんです。
子ども達が大きくなったときに、小さい頃の思い出を笑いながら語ってやることができるような私でいたいと思っています。ご一緒にいかがですか?

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