こどもの眼 11月号 園長 早川 成
「こどもの眼」
~小さい秋みつけた~
園長 早川 成
10月は三日連続の運動発表会から始まり、その後は農園、遠足、高良山登山、芋ほり、森あそび、童女木池散歩と、各学年それぞれに園外保育の目白押しです。
毎日のように子ども達と出かけ、スポーツの秋と行楽の秋を満喫しています。
動いた分、食欲の秋とは戦いの日々ですが、子ども達と過ごす時間が増えるのはとても嬉しく、やりとりを楽しんでいるところです。
年少さんの遠足でお弁当を食べる時のことです。
レジャーシートを忘れたので地面に腰を下ろそうとしていると、「一緒に座ろう!」と言ってシートの荷物を端に寄せてスペースを空けてくれた男の子がいました。
嬉しかったのですが、「いいよいいよ、ありがとう。お尻が大きいので、先生が座ったらはみ出しちゃうからね。」と丁寧にお断りしました。
すると、近くにいた女の子が「シートが入ってなかったよって、ママに言っとかんといかんね。」とひと言。そのアドバイスの仕方がおかしくて、私は「そうだね、ママに忘れんでねって言っとくね。」と言って笑ったのでした。
お弁当の後は、広場でいろいろな遊びを楽しみました。
初めて一緒に遊んだ女の子が、園に戻った後で私のところにやって来ました。
何か言いたそうなので、「ん?どうした?」と私が言うと、小さな声でポツリと「今日、楽しかったね!」と言ってお部屋に入って行きました。
「ほんと、楽しかったなぁ…」と、じんわりほんわりさせられる一言でした。
年中さんとは、農園まで歩く道中でたくさんお話ができました。
久しぶりに道路を歩くので、少しでも意識を高めておこうと、門を出てすぐのところで、「歩くのがすごい上手になっとるやん!どうしたと?」とわざと大げさに褒めました。
すると、「わくわくデーと、運動発表会があったけんたい!」と返事が返ってきました。
そこに屏の向こうにいた年長さんから声がかかります。
「大根の水やっとってね!」「うん、わかった!」
前の週に大根の種を蒔いたばかりの年長さんが、芽が出るかどうかを心配して後輩たちに水やりを託しているのです。今度は掛け値なしに子ども達の成長を感じました。
しばらく歩いていくうちに、予想以上に〝歩く力〟がついているのがわかりました。
よそみやおしゃべりで列が途切れたり、ぶつかったり転んだりもせず、しっかりと歩くことができていました。(「わくわくデーと運動発表会で、強くなったって言ったやん!疑っとったと?」と叱られそうですね。御見それいたしました。年中組さん、ごめんなさい。)
さて、ここで言う「歩く力」というのは体力のことだけではありません。
危険を察知して安全に歩く、隊列や速さを意識して歩く、目に入る物を楽しみながら歩く等、歩きながらいろいろなことを感じ、楽しみながら前に進むことができるようになっています。
私は列の前後を行き来し、安全を確認しながら歩いていますが、私が近づくと一人の男の子が言いました。
「あっ、園長先生の匂いがする!」「オレ、匂いでわかるっちゃん。スーパー忍者も園長先生の匂いやった!」
この後は、ほっともっと、キンモクセイ、給食センターから漂ってくるカレーの匂い…と、匂いシリーズで盛り上がりましたが、当園の教育目標通り、〝五感〟が豊かに育っています。
そして、おしゃべりを楽しみながらでも列を乱さずにしっかり歩くことができるようになっているのも大きな成長です。
いよいよ11月。季節も秋から冬へ移り変わります。日々成長している子ども達ですが、どうぞ目に見える姿だけでなく、さりげない会話や表情の中にある「小さい秋」(成長)を見つけてみてください。
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