こどもの眼 6月号 園長 早川 成
「こどもの眼」
~ 今でしょ! ~
園長 早川 成
待ちに待った登園再開の初日。門では「おはよう!」と挨拶をしながら、心の中では「お帰りなさい!」と言う気持ちで一杯でした。子ども達が元気にやって来るというのは、本当に嬉しいことだと身に染みて感じています。
さて、今日はいったい誰とどんなやりとりができるかなと、ワクワクしながら門で待っていると、支度を終えた年中組の女の子がやってきて言いました。
「園長先生、あのね、昨日の夜、お父さんが帰ってきて、自分だけピザ食べよった!」
キターッ!やっぱり、一日の始まりはこうでなくてはいけません!
「見たぞ~」とニヤリとする顔が浮かんできそうです。
久しぶりの登園でも期待を裏切りませんね。さすがです。
次に登園してきた年長さんは、おはようの挨拶の後、にっこり笑って「〇〇ちゃんにお手紙書いてきた!」と嬉しそうに教えてくれました。これもいつもどおりです。
園庭には、ダンゴムシを探している年少さんや、泣きべそをかいている子と一生懸命に遊んでいる保育者たちの姿も見られます。
何でもない会話、思い思いに遊んでいる子どもたち、こども園に子どもがいるという当たり前の風景がやっと戻ってきました。
ただ、少しずつ日常が戻りつつあるとはいえ、2カ月遅れのスタートですので、環境の変化の中で、まだ友達や遊びが見つからず戸惑っている子もいます。
もしかすると、まだここが何をするところなのかも、周りにいる人(ママではない大人)が、どこの誰なのかもわからずにいる子がいるかもしれません。
ですので、長いお休みの遅れを取り戻そうなどと躍起になってはいけません。
焦りは禁物です。今できることを、必要なことから、子どもたちのペースに合わせてぼちぼちやるぐらいの気持ちでいることが大事だと思っています。
とはいえ、大人と子どもとでは、物の捉え方や、感覚にズレがありますよね。
「こどものペースに合わせて…」と言ったものの、これがなかなか難しいのです。いったい何を考えているのかさっぱりわからなかったり、どうしてそうなる?何でそんなこと言う?と、感じることがよくあります。
昨年度末、年少組の園外保育(農園)に付いて行ったときのことです。
歩いて帰ってきて、終わりの挨拶をしたあとで、職員室に戻ろうとすると、一人の子から声をかけられました。
「どこ行くと?」「職員室だよ。」「何すると?」「お仕事だよ。」「なんのお仕事?」という具合です。
答える度に「何で?」「どうして?」と、次々に聞かれることを覚悟していると、隣にいた子が言いました。
「園長先生!」「うん、なに?」と新しい展開を期待して返事をすると、その子が言うのです。
「園長先生、洋子先生と結婚しとるっちゃろ?」
私は「いやぁ実はそうなんよねぇ…って、なんでやねん!」と、思わずノリ突っ込みしながら、笑ってしまいました。
いったい何がどうなったらこうなるのか、頭の中を覗いてみたくなりますね。
まさに、こどもの世界は摩訶不思議です!
職員室への階段を上がる途中、私にとっては「今ここでか~い!!」という質問でしたが、その子にとっては、「今だ!」というタイミングだったのでしょうか?
ずっと気になっていたのか、急に思いついたのかはわかりませんが、どちらにしても、意表を突くというか、度肝を抜かれます。
このように、子ども達の「今でしょ!」は、いつ何が飛び出すか全く予測不能です。上手に付き合っていくために、常に心の準備をしておきたいと思います。
話は戻って、登園再開初日。
門に遊びに来た年長の女の子たちが、「私のランドセル茶色」「私はピンク」と教えてくれました。
ちょっと驚いて「もうランドセル買ったと?」と聞くと、「ううん、頼んだだけ。」ということでした。
そこで私が「そう、注文しただけなんやね。あぁよかった。そんなに急いで小学校行かんでいいよ。皆がいなくなったら寂しくなるやん」と言うと、二人して「あぁ小学校行くの楽しみ~!」「うん。早く行きたいねぇ」と嬉しそうに笑っています。
私はそんな二人を前にして、「よ~し、見てろよぉ。これから3月まで、幼稚園の楽しさを存分に味わってもらうからな!」と、一人闘志を燃やしていたのでした。
やっと始まったばかりの園生活!まだまだ今からいろんなことを経験し、いっぱい楽しんでほしいと思います。
今しかできないことがあり、幼児期ならではの成長があります。
園長にも保育者にも、こども達に負けないぐらい「今でしょ!」がたくさんあるんです。
今、それをしっかり楽しんで、じっくり味わっておきましょうね。その上で、その先にある子ども達の成長を、皆さんと一緒に喜び合いたいと思っています。
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