天使こども園ニュース

こどもの眼 3月号 園長 早川 成

  • 2020.03.12
  • 園長

「こどもの眼」
~ ゴリラのように ~ 
園長 早川 成

突然ですが、皆さんはサルとゴリラの違いを知っていますか?
霊長類学者であり人類学者でもある京都大学総長の山極先生の記事を読んでとても感心したのですが、ゴリラは他の動物を飼うことができるんだそうです。
飼えるというのは、その動物の気持ちになれるということで、ほとんどの動物はこの能力をもっておらず、自分と他の動物をはっきり峻別して近づかない。でも、ゴリラは手の平でダンゴ虫を遊ばせたり、カメレオンに触れてみたり、他の動物と遊んでみたりするらしいのです。
同じ類人猿であるサルやチンパンジーにこの特性はみられず、先生から見れば人間とゴリラの違いよりもサルとゴリラの違いの方が際立っていて、その違いは「対面」したときに現れるそうです。
サルが相手を見つめることは威嚇を意味し弱い方が視線を逸らす。強弱や優劣をはっきりさせてトラブルを解決するのがサルのルールですが、ゴリラは人間と同じように対面し、優劣によらずに相手に共感して状況に応じた解決をすることができるというのです。

興味深かったのは、「人間がサル化している」という言葉です。
面接や食卓など、私たち人間は対面することで言葉に表せない、頭だけでは捉えられない、大事な何かを感じ取っていたはず。
デジタル機器に頼って生身の「対面」を疎かにし過ぎることは、人間が進化の過程で獲得してきたものを置き忘れ、サルに戻っていく行為ではないかと指摘しておられました。
先月のきりんに続きゴリラの話で恐縮ですが、こんな記事を目にすると、うちのゴリラ達、いや失礼…うちの子ども達は大丈夫!と胸を張りたくなります。

ある日のこと、年長さんの女の子から言われました。
「あっ園長先生、またトイレなの?」
年齢のせいか、コーヒーの飲み過ぎか、ここのところトイレが近くて…ということではありません。
私のトイレと、その子が廊下にいるタイミングがたまたま何度か重なったので、「園長はしょっちゅうトイレに行っている」ということになってしまいました。
〝小便小僧〟呼ばわりされるのは勘弁願いたいのですが、変な話、私にとってトイレの前で年長さんと話ができるのはとても嬉しいことで、井戸端会議ならぬ〝厠前会議〟を楽しんでいます。

つい最近は、こんなことがありました。
(一人の女の子を先頭に、数人が駆け寄ってきました。)
「園長先生!良かった会えて!」(とNさん)
「嬉しいこと言うねぇ。どうしたと?」
「お願いがあると」
「ふ~ん、何かな?」
「あのね、園長先生。私たち、幼稚園で暮らしたいと。」
「面白いねぇ。じゃあさ、園長先生がお父さんになろうかな。いい?」
「ううん、ダメ。」
(即答でダメ出しを食らい、年齢的にお父さんはないよなぁ…と反省していると、そういうことではないようで…。)
「子どもだけで暮らしたいと!」
「へ~子どもだけで?」
「いや、オレは園長先生がおったほうがいい。だって、いろいろ知っとるけん。」(おっKくん、いいこと言うやん!)
「で、どうしたいと?」
「う~ん。冷蔵庫とかがいるっちゃん!」
「お金はどうすると?」
「お金はAくんがいっぱい持ってるって!」
(Aくんに目をやると、特に得意げな顔をするでもなく、さりげないのがとてもカッコイイのです。)
「スゴイ!お金持ちなんやね。じゃあどうやって暮らすか、話していろいろ決まったら教えてね!」
「うん、わかった!」
(話を思い出すと笑いそうで、「こんな気持ちで用を足すことってあんまりないよなぁ…」と、トイレの中なのに、妙に幸せな気持ちになりました。)

子ども達が集まって話している様子を思い浮かべてみてください。
「冷蔵庫がいるよね?」「テレビも欲しい!」「オレお金持っとるばい、億万千円!」「ご飯は?お風呂はどうすると?」「髙浪先生には内緒?」「お家の人には何て言う?」「その前に、園長先生に言わんといかんっちゃない?」と想像するだけで楽しくなってしまいます。まさしく対面の世界ですよね!

さて、いよいよ年度末です。
子ども達との毎日を振り返り、一人ひとりの成長に大きな手応えを感じています。一年の締めくくりにあたり、園長として自信を持ってお伝えしましょう。
「天使の子ども達は間違いなく〝ゴリラ〟です!」
これからも、ダンゴ虫を掌の上で遊ばせながら、互いに向き合って育っていって欲しいと思います。一年間、ありがとうございました。

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