こどもの眼 2月号 園長 早川 成
「こどもの眼」
~ 育ちの時間(とき) ~
園長 早川 成
「♪きりんさん きりんさん どうして お首が長いの? あっちのお花も見たいし こっちのお花も見たいし だから お首がながいの♪」という歌があります。
こどものうた、特に最近のものより昔のうたほど味があるいい歌詞が多いと感じますが、きりんの首が長い理由をこんな風に表現できるっていいセンスだなぁと、感心させられます。
〝神さまへの手紙〟という絵本があります。
アメリカの子ども達が神様に宛てた手紙が綴られていて、谷川俊太郎さんの翻訳と葉祥明さんの絵がとっても素敵な絵本です。
「かみさま あなたはきりんを ほんとにあんなふうに つくりたかったの? それとも あれは なにかのまちがいですか? ノーマ」
天地万物を創られた神様への絶対的な尊敬と、いつもそばにいて話し相手になってくれる神様への親近感が同居していて、思わず顔がほころびます。子どもには敵わないなぁ…と、つくづく感心させられてしまいます。
のっけからいきなりキリンの話ばかりで恐縮ですが、もう一つ。
先日、TVをつけるとNHKのEテレで「ろんぶ~ん」という番組をやっていました。観るつもりでチャンネルを合わせたわけではないのですが、「知るって面白い!」というサブタイトルと、「キリンの首の謎に挑んだ解剖学者」というテーマに目が留まり、リモコンを置きました。
観始めると、ロンブーの敦のトークが面白く、またナビゲーターとして麒麟の川島がコンビ名だけの理由で登場するというあまりのくだらなさがツボにはまり、最後まで観ることにしました。
ところがこの番組。偶然見つけた割にはとにかく面白いのです!
わが国でただ一人のきりん専門の解剖学者は30歳の女性。哺乳類の首の骨は7つだというのが定説だそうですが、ある時彼女は「キリンの首の骨は8つある」という論文に出会い、スイッチが入ります。
首の動きに関係があると予測した骨に注目し、それは8個目の首の骨か?それとも1個目の胸の骨なのか?検体数が少なく解剖の機会が限られる条件の中、何度も壁にぶち当たりながら、キリンの首の動きと骨の構造、筋肉の動きを根気よく研究します。
行き詰っては悩み、手応えをつかんでは喜びの繰り返しは、全てたった一人。
そんな苦労をものともしない彼女の研究にかける情熱は、いったいどこから来ているのでしょう?
私が感心したのは彼女のキリンへの興味の強さです。
「こんなトリッキーな動物は他にいないと思ったんです!」と笑っていました。
やっぱり「面白い!」がベースにあるというのは大事ですね。
研究者に必要な資質とは、知的レベルやスキルの高さよりも、好奇心の熱量の強さではないかと思いました。
さて、今年も年長組の「鍋会」が終わりました。
本番に向けての練習では、料理チームは大根の切り方と出汁の味を確認し、焚火チームは薪をくべ、マッチで火をつけて燃やす練習をしました。
らいおん組はマッチをたくさん使い苦労して火を付けましたが、炎が上がったとたんに嬉しくて薪をどんどんくべたため、鍋をかける時には薪がなくなってしまうという結果に…。
本番では失敗経験を活かして見事2本で火を付けましたが、今度は用心して薪を節約しすぎ、少しずつしかくべないので消えそうになったり火が弱くて沸騰するのに時間がかかったりという苦労を味わっていました。
りす組は、練習ではすんなり火が付いたのに本番では失敗の連続です。
(実は練習の時は偶然上手くいったのです)
新聞がなくなる寸前で焦りと緊張感に包まれる中、鍋を運んできた料理チームから火が付いていないことを責められ追い打ちをかけられていました。
練習も本番もスッタモンダの大騒ぎでしたが、とにかく皆が笑顔で一生懸命で、それは楽しい鍋会となりました。
皆で考えた役割を一人ひとりが自分で選び、出汁や具材をどうするかを話し合って決め、個性という味付けに加えて、それぞれのクラスの〝持ち味〟で作り上げた、エピソード満載の鍋。
美味しかったのはもちろんですが、貴重な経験になったことは間違いありません。本人たちに自覚はないでしょうが、たくさんのことを学び、大きく成長した姿がありました。
子どもは常に遊びながら育ち、様々な経験によって学ぶ力と考える力が育っていると確信します。
「好き」と「面白い」で生きている子ども達は皆、小さな研究者。
「わかる」や「できる」の前に、いい研究ができるよう、「やってみたい!」と「何でだろう?」をたくさん見つけて欲しいと思います。
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