こどもの眼 1月号 園長 早川成
「こどもの眼」
~ わちゃわちゃの森 ~
園長 早川 成
2020年の幕開けです。
20年前、2000年問題で騒いでいたのがついこの間のようです。
随分前のことですが、このコーナーで「大人にとっては年越しでも、子ども達にとっては今日が明日になり、昨日が今日になるだけのこと。子ども達と一日一日を大切にして過ごしていきたいものです…」などと書いた覚えがあります。
〝日常を大事にしたい〟という気持ちは今も変わらないのですが、ちょっと年をとったのでしょうか、最近は一年の節目であることをかなり意識して元旦を迎えるようになりました。
今年は令和の2年目、21世紀になって20年目を迎えます。
どういう年になるでしょう?いや、どういう年にしたいですか?
私は園長として、すべきことは山積みですが、やりたいこともいっぱいです。
今年もまたいろいろなことがあるでしょう。
もちろん良いことばかりではないでしょうが、不安材料を並べて思い悩んでいても仕方がありません。
夢を描き、前を向いて、しっかりやっていきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
さて、12月半ばに久しぶりに〝あそび塾〟を開催しました。
終園日まであと一週間もないバタバタした時期のご案内ではありましたが14組の参加があり、総勢39名で森に遊びに行きました。
「〝あそび塾〟は保育でもなく行事でもありません。私自身も自分が遊ぶつもりで参加しますので、園長だと思わずに全て各ご家庭の自己責任で遊んで下さい!」と、最初に責任放棄宣言?をして遊び始めました。
私は宣言した通り全体把握をしていた訳ではありませんので、誰がどこで何をしていたのかわかりませんが、森の様子を一言でお伝えするとすれば、「わちゃわちゃと遊んでいました」というのが一番ピッタリきます。
〝わちゃわちゃ〟とは、あまり耳にしない言葉かもしれませんが、子どもの特性をよく表している言葉だと思います。
ごちゃごちゃでもあり、めちゃくちゃでもあり、わさわさと落ち着かない感じ。
規則性がなく、まとまりのない、自由奔放な様子だと言えばイメージできるでしょうか?森の中は子どもらしさに溢れていました。
このように、子どもは本来わちゃわちゃしているものだと私は思っていますが、最近わちゃわちゃしていない子が増えているように感じます。
もしかして、わちゃわちゃできなくなっているんじゃないかと危惧しています。
こんなことを言うと、「落ち着きのない子どもが増え、学級崩壊が問題となっているというのに不謹慎な!」という声が聞こえてきそうですが、私が言いたいことの答えは森で遊ぶ子ども達の姿にあります。
皆でわちゃわちゃしながら遊んでいると、興味のあるものを見つけ、好きな遊びが生まれた瞬間、子ども達は集中力を発揮し、根気強く遊び続けます。
地面から突き出た竹や木の切り株を何とかして取り除こうと、のこぎりを使って格闘している子ども達。
焚火に夢中になって火の側から離れずに薪をくべたり動かしたりを楽しんでいる子ども達。
大人はのこぎりや火ばさみの取り合いにやきもきし、危なっかしい手つきにハラハラすることもありますが、手出し口出しをできるだけ我慢して見ていると、少しずつ落ち着いて、飽きることなくひたすら遊び続ける姿がありました。
また、森には、とにかく動き回り、やりたいことが次々に移り変わる子がいる一方で、そうではなく、なかなか遊びが見つからない子、少しずつゆっくり遊び始める子もいます。何かを集めたり、作ったり、見つけた遊びに時間をかけてじっくりと取り組む姿もあるのです。
このように、〝わちゃわちゃ〟とは、落ち着かない状態を言うのではなく、多様性が許され、動と静が混在しながら、心も体も開放して自分を発揮できる世界だと思います。森の中には〝わちゃわちゃ〟することで、自然と落ち着いてくる姿がありました。
こども達の持つエネルギーは我々の想像以上に果てしないものであり、またそれぞれに違うものであることを、改めて思い知ります。
逆に言うと、一人ひとり異なる興味関心がそれぞれに高まり、落ち着いて集中できるようになるためには、充分な〝わちゃわちゃ環境〟が必要だということでしょう。
あそび塾には卒園児である兄姉も参加してくれました。
2年生の男の子が、「園長先生、弟子にしてください!」と朝から何度も言いに来ました。師匠のつもりも弟子をとる予定もありませんが、卒園してもなお〝遊び仲間〟としてあてにされていることが嬉しくてたまりませんでした。
小学校での様子をお母さんに聞くと、卒園児同士で学校の中に〝秘密基地〟を作っているとのことです。
面白いのは、最近「チャイム係を決めないといけない!」と言っているらしく、何のことかを尋ねると、秘密基地にいるとチャイムが聞こえず、授業が始まるのが分からないから、知らせに来る係を決めないといけないということだそうです。
チャイムが聞こえないなんて、どこにどんな秘密基地ができているのでしょう?
休み時間の度に、コソコソと集まっている様子を思い浮かべただけでワクワクしますが、「どうぞ先生に見つかりませんように…」と祈りたくなるのは、大人として失格でしょうか?
更に嬉しいことに、その二人は大きくなったら無人島に行く約束をしているそうです。「いい時間を、いい仲間と過ごしているなぁ…」と、つくづく嬉しくなってしまいました。
山本町に借りた森を何という名称にするか、決めきれないままでしたが、70周年の節目でもありますし、2020年の年頭に当たり、「わちゃわちゃの森」と呼ぶことにしたいと思います。
子どもたちの〝わちゃわちゃする権利〟を守り、生きる力を育む森です。
皆さまのご理解とご協力をどうぞよろしくお願いいたします
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