こどもの眼 10月号 園長 早川 成
「こどもの眼」
~ 面白力(おもしろりょく) ~
園長 早川 成
「園長先生!ちょっと来て!早く早く!」と、年長組の男の子たちが呼びに来ました。
その興奮気味な様子に、私も「なんだなんだ!どうしたどうした!」と同じくテンションが上がります。
行くと、保育園と本館の渡り廊下に子どもたちが集まっています。
のぞき込んでいる先を見ると、輪の真ん中に小鳥がうずくまっていたのでした。
「じっとして!動いちゃいかんよ。踏みつぶさんようにね」と言いながら近寄って手のひらに載せると、ヒヨドリの小鳥のようです。逃げずにキョトンとしています。
呼びに来た男の子(一番テンションが高い)が、「僕も触りたい!」と言って手を差し出すのでそっと乗せると、それはそれは嬉しそうです。
しばらくそのままにしておきたいのですが、周りの子も触りたがりつかみ取ろうとするので渡すと大変なことになりそうです。
「ケガがないかどうか調べるから待って…」と、もう一度私の手の平に乗せたときです。
「キーッ」という鳴き声が聞こえました。親鳥が探しているようです。
「あっ、お母さんが迎えに来た!」と言うと子ども達も興味津々でキョロキョロしています。
小鳥を早く見えるところに逃がそうと場所を探している間、子ども達は親鳥の様子が気になりながらも、小鳥が触りたくて仕方がありません。
気持ちはわかりますが、小鳥も親鳥の声に応えて鳴き始めたので、急いで放さなければいけません。
そこで私が「あのね、人間の匂いがつくとお母さんが嫌がって迎えに来なくなるから、あんまり触っちゃいかんとよ。」と説得すると、さっきの男の子が真顔で言いました。
「園長先生、めっちゃ触っとるやん?」
まるでコントのようでした。
私は吹き出したいのを我慢して、「そうなんよ。だけん早く逃がす場所を探さんといかんと。」と言うのが精一杯。
倉庫の屋根に小鳥を置いて、男の子たちに「離れて見よかんね。騒いだらお母さんが怖がって近寄られんけん、そ~っとね」と言い残してその場から離れました。
その後すぐ、副園長もその場を通りかかり、子ども達が小鳥と親鳥をじっと見守っているところを見かけたそうですが、しばらくして子ども達から「お母さんが迎えに来て一緒に飛んで行ったよ」と、嬉しそうに報告があったとのことでした。
ある朝の、ちょっとした出来事ですが、笑いあり感動ありのドラマのようです。いい一日になりました。
話は変わりますが、1学期に年中組の女の子から立て続けに手紙が届きました。
「きょうもありがとうございます。えんちょうせんせい いつも きついですよね。」
担任と一緒に読んで大笑いしましたが、それから少しして二通目が届きました。
「えんちょうせんせい じんだいこ たべたことある。わたしわ たべたことないよ。」
子どもの感性には理屈抜きに感動を覚えます。
何故そう感じたのか、どうしてそれを伝えたいと思ったのか、想像するだけで心があったかくなります。
手紙を書いている様子を思い浮かべて、とっても嬉しくなったのでした。
子どもの持つ天性の〝面白さ〟には大人を変える力があると、時々思います。
決して大げさではなく、未来の地球を救うのは、子ども達の「面白力」なんじゃないかと思うほどです。
この天然資源を守るために、園長としての私の役目は、時には手を引っ張って連れていかれ、時には手紙のやり取りを楽しんで、ヒヨドリの親子のように呼び合いながら、いつも子ども達の近くにいることが必要なんだと思っています。
ある朝、門に遊びに来た年中組の女の子がポツリと言いました。
「園長先生、天使こども園ってスゴイよね。」
どうしてそう思うのかはわからずじまいですが、私も同感です。
だって、天使の子ども達の「面白力」はピカ一だと、胸を張って言えるからです。
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