こどもの眼 9月号 園長 早川 成
「こどもの眼」
~ 夏休みの宿題 ~
園長 早川 成
大雨の影響で始園日が休園になるという不測の事態になりました。
園は幸いにも無事でしたが、親戚やお友達など、お知り合いで被害に合われた方はいらっしゃいませんでしたか?
被災された皆様には、心からお見舞い申し上げ、少しでも早くいつもの生活に戻ることができるようお祈りしています。
出鼻をくじかれてしまいましたが、いよいよ新学期がスタートしました。
休み明けで最初は調子を崩す子ども達もいますが、例年二学期の最初は子ども達も不安定です。
天気と同じで、土砂降りも長雨もありますし、台風の日もあります。
その姿を園では教師たちが一生懸命に受け止め、丁寧に関わっていきますので、お家の皆さんもどうぞ焦らずに、子どもの気持ちに向き合いながら、じっくりと晴れ間を待っていただければと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
さて、新学期が始まって二日目の朝、年少さんの女の子が門に遊びに来たので声を掛けました。
私が「昨日は…」と言いかけハッとして口をつぐむと、その子は「何?どうしたの?」と不思議そうな顔をしています。
実は、その子が書いた手紙を前日に担任から受け取っていたので「ありがとう」とお礼を言おうとしたのですが、その手紙が〝もりぞうさん〟に宛てたものだったことを思い出して、あわてて言うのをやめたのでした。
もりぞうさんは、いつもなぜか年長さんが森に行ったときだけに現れるのですが、今回の70周年では特別にお願いしてオペレッタに出演していただいていたので、今や全園児の知るところとなりました。
劇に出てきただけだとそんなにインパクトはなかったのかもしれませんが、その子には卒園児のお兄ちゃんがいるので、もしかしたら終わったあとで話題になったのかもしれません。
あくまで想像ですが、どんな話をしたのかなぁ…と、その様子を思い浮かべると微笑ましい限りです。
とにかくなんとかごまかせたので、途中で気が付いてよかったと胸をなでおろしました。
さて、今年の夏休みは、何といっても最後の最後に「創立70周年」という大イベントを控えていたので、落ち着かないというか余裕がないというか、最初から「夏休みの宿題」が残っているような感覚でスタートしました。
当日ご参加いただいた皆様、どうもありがとうございました。おかげさまで無事に終えることができホッとしています。
第1部の教職員によるオペレッタ「町のねずみと森のねずみ」はいかがでしたか?
脚本、曲と歌、キャストまで全て自作自演で、相当に時間もかかり苦労もしましたが、私が嬉しかったのは、役を演じる者だけでなく、それを支える裏方も全員が一丸となって取り組むことができたことです。
大道具や小道具を作ったり、練習のためにシフトを交代したり、衣装やメイクの工夫をしたり、バタバタと、ワイワイと、皆で力を合わせて作り上げたオペレッタでした。
保育者とはいえ、人前に立つことが苦手な職員もいます。声が出なかったり、セリフが上手く言えなかったり、悩みながら頑張っている姿もありました。
練習の度に園長がいろいろと注文をつけるので、いい加減勘弁して欲しいと思った者もいたことでしょう。
大変だったと思います。それでも、何とかやり遂げることができました。
最後の幕が下りた後は皆とてもいい顔をしていて、いい雰囲気が広がっていました。私は、この達成感、この感動が、とても天使っぽくて大好きです。
この2学期から3学期、子ども達もクリスマスの祝会やページェント、生活発表会で舞台に立つ経験をしますが、今回保育者自身がその時の気持ちを経験したことが、きっと生かされるでしょう。経験こそ財産だと改めて思います。
第2部の礼拝・式典では、神様やお世話になった皆様に感謝を捧げました。
準備を進める中で70年の歴史を振り返る機会を与えられましたが、何よりも嬉しかったのは、本当に多くの方に支えていただいていることを改めて感じることができたことです。
歴史とは時の流れではなく人の営みであり人と人とのつながりであると強く感じました。
これからも、いろいろな人と出会い、様々な出来事を通してつながり合いながら、歴史を積み重ねていきたいと思います。
また今回は、過去の歴史に感謝を捧げる一方で、これからの目標や方向性について考えるときが与えられました。
今年は園長として10年の節目でもありましたので、今後の歩みへの思いを強くすることができました。
第1部のご挨拶でもお話しましたが、芋虫を見つけて「殺したい人?」と言って笑い、ブランコで遊ぶのに靴を水たまりで濡らして来ないと乗せてやらないという子ども達のことを、私は放って置けません。
芋虫を捕まえたら「蝶の幼虫だ!いや蛾かもしれない!」と議論をし、「飼ってみよう。エサは何?」と考える好奇心の塊のような子はいなくなってしまうのでしょうか?
仲良くブランコで遊ぶためにルールを決めたり、ズルをして喧嘩になったりするような子どもらしい姿は見られなくなってしまうのでしょうか?
バカバカしいけど真剣で、危なっかしいけどあったかい、子どもの素敵な世界を守らねばなりません。
天使はこれからもずっと〝多様性〟を大事にします。
いろんな子がいれば、毎日いろいろなことが起きますが、その全てが学びとなります。
考えることもやることも多くなりますが、それが我々のやりがいです。
「夏休みの宿題」は、未来に向けての終わらない宿題となりました。
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